15) 三相交流
電気はたとえ交流であっても、各瞬間を見ればプラスとマイナスがあるわけで、二本の電線が必要なことは当然である。通常、家庭では二本の電線で電気を使っており、これを単相交流という。ところが送電線を見ると、鉄塔の左右の腕は各三本でて、三本の送電線を使い、これを三相交流という。
補・74図のように三個のコイルを120度ずつ角度をずらして配置する。そして磁石を時計方向に回転すると、三個のコイルは磁力線の変化を受け、それぞれ誘導起電力が発生する。
この起電力の生じかたは、コイルa a´から順に120度遅れて、a a´の波形と同じ正弦波電圧を発生する。これを、電圧の位相が120度ずれているといい、このような交流を三相交流という。 三相交流は、独立した発電用コイルが三個あるわけですからそれぞれの電圧を利用するためには、六本の電線が必要となる。
補・75図のように120度ずつ位相のずれた三つの電線にはそれぞれ負荷がつながれている、単相回路が三組で電線は六本ある。しかし電線を二本ずつまとめて、それぞれを一本にすると三相路なる。
補・74図
電線を二本ずつまとめると、電流が二倍になるように見えるが、120度位相の違った電流が加わるので、電流の大きさには変化がなく、このつなぎかたを、△(デルタ)結線または三角結線という。
補・75図
また、補・76図ようにつなぐこともでき、この場合には三本まとめた電線には電流は流れません。これは、120度位相の電流三つを加えるとOになるからです。従って線はいらなくなり、このようなつなぎかたをY結線また星形(スター)結線という。
三相交流は、単相に比べて電線を一本増やすだけで、三倍の電気を流せます。
補・76図
16) 誘導電動機
電池で回すモータなど直流を使ったモータは整流子があるモータで整流子モータまたは直流モータと呼ばれる。
しかし、交流の特性を生かしたモータである誘導電動機(誘導モータ)をつかうのが普通である。
この原理を理解するために、補・77図のように、回転できる磁石の中に、銅棒をカゴ型にしてつくった回転子を置いた装置を考える。
今、磁石を回転させてやると、回転子も磁石と同じ方向に回転する。磁石の回転を止めると回転子もとまり、磁石を逆方向に回すと回転子も逆方向に回る。
実際の誘導電動機では、磁石を手で回すわけにはいかないので、磁石を回すかわりに、電磁石による交流の回転磁界を利用する。
補・77図
誘導電動機の固定子に、補・78図のように配置したA、B二組の電磁石を共通の電源につなぐ。
このとき、Aのコイルと直列にコンデンサCを入れておくと、AにはBの電流iBよりも位相が90度進んだ電流iAが流れる。そこで、補・78図のように交流の一周期ごとに 電磁石の極の状態を描いてみると、電極が一定方向に回転したのと同じ結果が生じることがわかる。
補・78図
このため回転子も同じ方向に回転する。
誘導電動機は、整流子やブラシなどの部品も不要で、構造が簡単で、しかも回転数が変動しにくいという特徴を持っている。
単相誘導電動機の原理
補・79図
5.3 遠隔操縦装置・保護装置の保守・点検
1) 遠隔操縦装置に対する規則
(1) 船検第177号、船検第325号
非常停止装置の要求
制御回路無電圧警報装備要求
燃料調整軸に過負荷ストッパ追加要求
クラッチ嵌インタロック装備要求
操縦空気圧力低下警報装備要求
警報の個別化、ディマー、続発方式、警報テストの装備要求
操縦場所、機関状態表示設備要求
警報電源のDC化要求
空気弁閉警報装備要求
(2) 舶査145号、船舶機関規則
操縦空気源2系統化の要求
LO圧力危急停止装置の装備要求(735kW(1,000PS)以上のCPP又はクラッチ付き機関のみ)
過回転危急停止の装備要求(735kW(1,000PS)以上のCPP又はクラッチ付き機関のみ)
2) 就航時の保守・点検内容
(1) 毎日1回、ランプテストの押しボタンを押して、表示灯の切れ、ゆるみがないか点検する。
(2) 初航、整備・修繕後の航海の時には、振動等で各結線の圧着端子取り付けのビスがゆるんでいないか、1ケ月後に点検する。
(3) 自動停止装置や警報系の安全装置が正しく作動するか、半年に1度は点検する。
(4) 空気タンクのドレンは、当直毎に1回以上抜く。
(5) 空気系統のエアフィルタの掃除を毎月1回行う。フィルタ中身の取り替えは毎年定期的に行う。
(6) リモートコントローラの設定値は、正しくセットされているか、半年に1度は点検する。
(7) 制御用減圧空気用の圧力計が正しく指示しているか、設定値はよいか1月1度点検する。
3) 電気系統部品の点検及び交換時期
○: 点検 ◎: 交換 ※: オーバホール |
No. |
点検項目 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5年 |
1 |
リレー関係 |
表示灯、 警報用 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
制御用 |
○ |
○ |
◎ |
○ |
◎ |
電磁弁用、 ガバナモータ |
○ |
○ |
◎ |
○ |
◎ |
2 |
ポテンショメータ関係 |
操縦ダイアル、 コネクタ |
○ |
○ |
○ |
○ |
※ |
ガバナ追従箱用 |
○ |
○ |
○ |
○ |
◎ |
ポータブル操縦用 |
○ |
○ |
○ |
○ |
◎ |
3 |
増幅器関係 |
制御用 |
― |
― |
○ |
― |
○ |
4 |
指示計関係 |
機関回転計、 プロペラ翼角計 |
― |
― |
○ |
― |
○ |
5 |
検出スイッチ関係 |
リミットスイッチ |
○ |
○ |
○ |
○ |
◎ |
圧力スイッチ、 温度スイッチ |
○ |
○ |
○ |
○ |
◎ |
6 |
ガバナモータ関係 |
モータ |
○ |
○ |
○ |
○ |
◎ |
カーボンブラシまたはブレーキ |
○ |
◎ |
○ |
◎ |
○ |
7 |
電磁弁関係 |
各電磁弁 |
○ |
○ |
○ |
○ |
◎ |
4) 中間検査、定期検査時の点検内容
(1) リモートコントローラの電源はAC100V、AC24Vの各電圧を測定する。
電圧は定格の±10%以内にかならず保持されていること。
(2) 各リミットスイッチ、圧力スイッチ、電磁弁回路、ガバナ追従箱等の本体、電源の絶縁はよいか。(アースしてないか調べる)また線を外して、テスタ等によりON、OFF時の作動で導通テスト結果がよいかを点検する。
(3) リレーパネル盤、電源パネル盤等、各結線の圧着端子の断線はないか。
また、リレー等の接点部の摩耗や焼損しているものがないか。
特に、リレーのコイル部の色が少し変わっているものは新替えする。
(4) 各ポテンショメータ10kΩ、または5kΩのオイルの漏れがないか点検する。
(5) 各電磁弁本体取り付けビスがゆるんでいないか。
また、各電磁弁用スプール弁は摩耗していないか、ゴミによる固着はないか点検する。
(6) ガバナ追従箱の軸受、リンクピン、歯車等の取り付けにコジレ、ゆるみ、ガタ等がないか点検、要すれば調整する。
5) 使用部品の説明例
(1) リミットスイッチ・マイクロスイッチ 記号:LS
端子を取り外しテスタでチェックする、不具合があれば交換する
(2) ベローズ式圧力スイッチ 記号導通チェック(外部端子を外してから行うこと)