2) 疲労およびクリープによる破壊
静的な応力としては降伏応力以下の値であっても、その応力を長期にわたって繰り返し受ける事により機器が破壊に至る事がある。これを疲労破壊という。平均応力σmの両側に応力振幅σaで繰り返して負荷を与える疲労試験を行い、試験片が破壊したときの繰り返し数を横軸に、応力振幅を縦軸にとってプロットした線をS-N線図という。鋼材にたいしては補・48図に示すように、右下がりの傾いた線と水平線とからなる場合が多い。この水平線より下の応力ではいくら繰り返しても破壊は起こらないのであって、この水平線にあたる応力σwを疲労限度という。傾いた線が水平線に移る限界の繰り返し数はおよそ107回といわれている。しかし、材料によって、また、環境によっては疲労限界が存在しない場合がある。
金属材料が高温で長時間一定の引張り荷重をうけると、補・49図に示すように、ひずみは、時間とともに始めは急速に、次に一定のひずみ速度で、最後に再び急速に増加にて、ついには破断にいたる。このように一定の荷重のもとで時間と共にひずみが増加する現象をクリープという。
補・48図 S-N線図
補・49図 クリープ曲線
3) フラクトグラフィ
機器が破壊した場合、その破面には破壊の様式に特有な幾何学的模様が残されている。この模様から破壊の様式やその原因を調査する方法をフラクトグラフィという。破面を観察する手段としては、肉眼、虫眼鏡、金属顕微鏡から電子顕微鏡にいたるあらゆる観測手段が利用される。
まず、脆性破壊を起こした破面には、ヘリングボーン(鰊の骨)パターンあるいはシェブロン(山形)パターンと呼ばれる模様が亀裂伝ぱ方向に形成される場合が多い。その一例を補・50図に示す。
延性破壊においては、すべり面の分離や微小空洞が合体して破面が形成されるが、微視的には、補・51図に示すような、デインプルと称する多数の微少な窪みが観察される。
最後に、疲労破壊では、亀裂の進展の過程における荷重の変動によって、補・52図に示すように、ビーチマークと呼ばれる貝殻状の縞模様が現れる場合がある。
補・50図 鋭い隅部(矢印)から発生した破壊のジェブロン・パターン
補・51図 引張りで破断した1020鋼のディンプル、大きいディンプルは更に小さいディンプルを含む
補・52図 連続して進展して行くき裂面の位置を示すビーチ・マーク
補・50、51、52図はMETALS HANDB00K、 Vol.10 Failure Analysis and Provention Editor、
Howard E.Boyer、8th Edition 1975
AMERICAN SOCIETY FOR METALS
による。