日本財団 図書館


K造船(新造)
 
1. 組織
・ 設計部、工作部(船殻課、塗装課、船艤課、機艤課、管艤課、電装課)
 
2. 職種別技能者数
・ 本社従業員は設計10名、工作部技術陣8名、工作部直接工20名。20名の内訳は船殻17(撓鉄2、NC切断4、鉄工組立6、溶接5)船艤1、機装2。
・ 協力工:117名。
・ 協力会社:社長はまだ初代の時代で、2代目になっている会社はないが、後継ぎをよその会社に修行にだしている段階。
・ 協力工の平均年齢は50歳を少し超えたところ。
・ 搭載クレーン下の玉掛は、大体のところ協力会社の社長が段取りの一環として行なっている。
・ 工程は、本社側では主要日程を抑えているだけ。細かい管理はしていない。
通常の会社のような作業長、班長はおいていない。
 
3. 職種別作業内容
(1) 作業指示者
・ 係員の仕事は、進捗と検査。見習いも兼ねて。
・ 作業長制は敷いていない。∵ 本工が若い。
・ 作業指示は課長、部長が協力業者にする。
(2) 職種内容
・ 現図:NCテープ作成(CAMSR)、曲げ型作製、小物マーキン(2名)。原則四周仕上げ。交代制はとっていない。現図は深残業できない。
・ 撓鉄:プレスから船台の歪み取りまで行わせている。協力工が他に2名。プレスした人が熱曲げまで一貫施工する形態。本工は3年目の若い人。もともとは協力工のみだったのを改め、本工を平成5年から採用し養成中。これまで約20名採用した。そのうちの2名が撓鉄工。テクノスクール(中卒出で職業訓練)から採用。
・ NC切断:2台のNC機と鋼材仕分け、マーキング、部材仕分けまで行う。協力工なし。
・ 切断職:カラープレート等の小物部材のアイトレーサは本工、ウィゼル専門工はいないが鉄工組立職が行い、作業日報では区分して計上。
・ 鉄工組立:型鋼の加工も含む(協力工担当)。
・ 溶接:大組。半自動(CO2)。手棒はきわめて少ない。
・ 板継ぎ:鉄工職が仮付け、ユニオンまで一貫。
・ 大組立、船台は2業者が船首、船尾で分け、地上から船台まで一貫施工。吊ピース類まで自前で製作し、用意する。
・ 協力工はほぼ造船所専属で、実質上本工扱い。作業監督は親方。完全請負までには至っていない。
・ 盤木調整:鉄工組立の仕事。作業全体を指揮する業者がいる。多能工で位置決めも行う。
・ クレーン:搭載クレーンの運転。
・ 大組足場:構内足場(船台含め)すべてを行う。
・ 掃除:検査前掃除、ブロック、居室掃除全般。
・ 甲板艤装:補機台の取付溶接。荷役装置含む据付、芯だしの旗振り。
・ 機関艤装:機関室内の機器の据付、芯だし。
・ 配管:管加工は外注。一品図は設計で作成。
・ 電装:電路は内作から敷設まで。
・ 電気設備:社内設備保守。船内仮設照明。一次電源まで。
・ ブロック検査 → 各課で申請、受験。
・ 木艤:一括外注。
・ 安全:工作部に所属。ドックマスタ。
 
4. 標準作業書
・ 作業毎の要件は特に決めていない。
・ 標準作業書は特にない。
 
5. 雇い入れ基準
(1) 本社採用
・ 採用時に技術職か技能職かを分けている。ただし、実力重視。
・ 他府県人には、寮、社宅提供。テクノスクール卒はだいたい寮にいれる。結構、良いのがいる。
・ 雇い入れ教育:1ヶ月の養成期間中におおかたの技能の教育訓練をおこなっている。
・ 本工は、職種非限定採用。本人希望も多少は参考にするが、管理者が向き、不向きで判断。
(2) 本工新卒採用の背景
・ 他社の傾向と逆向していることは、重々、認識しているが、職種、技能面で危ないところを補強する意味で新卒本工を採用。
・ 協力工で人が集めにくくなったことが本工採用の最大のきっかけ。
・ テクノスクールは、先生の「協力業者名では採用できない、本社でないと・・・」との助言もあってのこと。
・ 人数上限、時期までは決めていない。
・ 技術陣は、東工業造船科からの採用が従来慣行。しかし、専門学校がなくなりつつあるので、教育問題は緊急ではある。
・ 設計:2年前、1人中途採用したことがあるきり。
(3) 協力工の採用の場合
・ 協力会社は、中途採用べース。新卒はいない。
・ 本社を辞めた人の再雇用は協力会社でも駄目。
・ 採用にあたって、特に書類の提出は求めていない。詳細は、協力会社に一任。
・ 協力会社は、定年後の再雇用はしている模様。腕のいい人は残すよう本社が要請することあり。
・ 女性工:いない。
(4) 採用が困難な職種
・ 船台鉄工職(固め)、撓鉄と思われる(協力会社担当のため、詳細不明)。
・ 現図は県内での人数が少なく、将来、問題になりそう。
・ 大手で勤めた人がUターンしてくれば、多少なりとも戦力になる。
 
6. 技能レベル判定基準と考課基準
・ 技能レベル判断基準や考課基準は特になし。作業させてみて判定。
・ 協力会社の技能判定基準:縁故採用の常雇いに対しても、「やらせてみて判断」が普通で、特別な基準は設けていないのではないか。
・ 単価がいいのに腕がもう一つの場合は、親方と交渉して再ネゴ。
・ 業者ごと、職種ごとに単価取り決め(常用)。
・ 電装は、電線長あたりの単価。塗装は面積べースで請負。
 
7. スポット工採用有無と職種
・ ほとんどスポット工手当てのケースはない。あってもレアケース。
・ 今までのスポット採用のケース:溶接、歪み取り(近隣他社に応援求めたことあり)。
・ スポット工採用は県内優先、いなければ他府県にまで声をかけざるを得ない。県内造船人口はジリ貧。
・ アゴアシつきで県外から採用するケース:状況によってはあるかも。
 
8. 技能維持・向上と教育訓練
(1) 本工に対する技能教育と査定
・ 鉄工組立の本工は小組、中組の一部ができる程度、ブロツク組立はまだできない。
・ 若手の本工に対する技能教育は協力会社の人のやり口を見て「やって慣れろ」といっている。
・ テストピース作成が訓練課題。
・ まだ若いので待遇に差はつけていない。腕がいいのに少しだけ、色をつける。勤務態度も大きい要素になりつつある。
・ 高卒で配属先(設計、現場)による給料の差はない。
・ 新卒は、基本的に年功序列。後輩をぽっと上にいかせるようなことは、考えていない。
(2) 技能維持・向上
・ 定着しそうな人に、入社1年後から資格取得の県内での講習会に参加させる。費用は会社負担、協力工は協力会社負担。ただし、講習会の時数は、本社がみている。
・ 技能維持・向上に対する考えは特にない。インセンティブも設けていない。
・ 設けるとしても、組立工などの資格がないので、溶接職とくらべ不平等にならないかとの懸念がある。
・ 現在のところ、他府県におくって技能訓練するまでの必要性は感じていない。
・ 技量よりモラル教育がいい。
(3) 公的資格取得のための地域内移動訓練に対する意見
・ 技術の継承が途絶えれば、造船も危ないので、その面での間接的な公的助成や巡回技能訓練制は必要ではないかとの問いに対し、
→ 結局は、定着率をどうみるかの問題にもかかわってくるから、模範回答としてはYesと言いたいが、現実には、必要性を実感していない。
→ テクノスクール卒業生は、たいてい夜間高校にいっているので、時間的にも基本的に、養成する余裕がない。従い、同業者で共同訓練所の話はあるが、訓練した人の雇用保証ができるかという点が障害になっている。
(4) 技能訓練、業界への要望など
・ 鉄工職の公的「級つけ」など資格がいるのではないか。資格と裏腹に給与面の待遇が必要になるが、それで良いと思う。
・ 特殊な機械類の組立ノウハウについて自信がある。
特殊なものはメーカから指示あり、メーカ主導で1隻目は戸惑うが、2隻目はやはり慣れがある。設計もノウハウを蓄積してはいる。
 
9. 外国人労動者に対する考え
・ 外国人労働者は協力会社を含め、今のところ入れない方針。∵ 日常生活の面倒をみるのが大変。
 
10. 請負条件等に対する考え
(1) 日報の計上について
・ 複合職業者であるが、小(大)組取付、溶接の工費はしっかり区分して計上している。
・ 協力会社の時数を操作することはない。操作すると、きりがない。単価は別途、協議して決定。
・ スポットも日報計上。一括請負業者も構内作業者は日報計上。
・ ハツリ・グラインダ:ハツリは現在なし。グラインダのみ。
・ 本工の日報計上:課長が担当。
(2) 造船業の将来について
・ 造船の魅力は何か?
「海のロマン」などのような言葉だけでは駄目。若い人は、人生が何かもわかっていないので、広い指導が必要。
・ 県内造船所は13社(修繕専業含め)あるが、経営は苦しい。
・ 石炭産業のように公的補助をだしていれば、結局、造船も同じ道を辿るのではないか。
・ 大学も少子化で学生が少なくなっているので、造船の景気が上向いたときには、逆に人集めができなくなる心配もある。
以上








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION