U造船(新造)
1. 組織
・ 現場の組織は船舶の製造部と鉄構部に分かれる。
・ 鉄構部:ブロック組立150T/月位を施工(造船応援)。
2. 職種別技能者教
・ 従業員数:管理職 23名、一般 107名、協力工、180名。
・ 協力会社は18業者と一括外注の数社。
・ 内業組立課:課長1、係長1、作業長1、班長2,4業者、本工8、協力工24。
・ 組立&船台組立:課長1、班長1,2業者、本工2、協力工52。
・ 船装課:課長1、係長1、作業長2、班長3,6業者、スポット1G、本工0、協力工62。
・ 機装課:課長1、係長0、作業長3、班長4,6業者、スポット1G、本工11、協力工28。
・ 工務課:船装課長兼任、係長1、係員3。
・ 検査課:課長1、検査員2。
・ 安全課:課長2。
・ 倉庫:元班長2人従事(間接扱い)。
3. 職種別作業内容
(1) 複合職化のスローガン「一人2職をもて!」、協力工はもっと多くの職をこなしている。
(2) 内業組立課
・ 現図:設計部所属。本2+協5(ネスティングまで)。
・ 曲げ型作製:外注。ユニバーサルは余り使っていない。
(3) 組立&船台組立
・ 多能工化を図っている。例)溶接職が取付をしたり、取付が溶接をしたり等。
・ 本工は、若く(20代)、多能工化するまでには至っていない。
・ 玉掛資格は、ほとんど全員所有(溶接工ももっている)。
・ ロンジ先付け工程は2人で板継ぎ、溶接。
・ 船台取付業者は、2業者で船首、船尾にわけ、1船毎に交替。
・ 進水台盤木はスポット。腹盤木は船台取付工。
・ 吊ピースガス切りは船台取付工。取り外し後、鋼製箱に入れ、内業に戻して再利用(3回)。
・ 水張テスト:船台取付(取付業者の責任施工で取付工が行う)。ただし、エアテストは専門の人が施工。
(4) 船装課
・ 班長、作業長は全員玉掛資格所有。
・ 塗装は管理も協力業者。
(5) 機装課
・ 管一品図:外注、船装・機装設計所掌。
・ 管製作:約半分外注(色物は全数外注)、社内は月間30T(≒40%)。
・ 機関据付、機関室の鉄工、溶接、配管、管製作、電装。
(6) 工務課
・ 甲板艤装の加工外注手配(パイプユニット台、機装タンク、階段、手すり)。
・ 現業職は0。
(7) 安全課:課長2。
・ 動力(電気2、ガス1):電気2級所有。
・ 抵抗器、工器具修理:間接扱い。
(8) その他
・ 倉庫:元班長2人従事(間接扱い)。
・ ごみは、設置した分別鋼鉄箱がいっぱいになると、安全課で回収。
4. 標準作業書
・ 精度向上(品質管理)すれば、技能者がいなくても船台工事は出来るという信念でブロックの精度を出すような作業手順書を作っている。
・ 作業手順書は図解入りのブロック組立手順、位置決めの手順書がある。しかし、余り利用されていない。
・ 施工要領書:わかりやすいように、収縮伸ばしは片側だけにして、線(バット)と点(機装ユニットなど)合わせとしている。最初は管理職に説明し、その後、各班毎に集めて説明。
5. 雇い入れ基準
(1) 協力業者の採用ルート
・ 地縁中心。地域の有力者に依頼。
・ 新卒者はなかなか入ってこない。構内業者では新卒採用殆どない。工場をもっているところでは定着率はまあまあ。
・ 未経験者は仕事を覚えるまで時間がかかるので、敬遠。
・ 職安経由者は、使えないのが多い。Uターン者にたまに良いのがいるが、なかなかあたらない。
・ 60歳以上の採用は、特殊技能保持者でない限り、敬遠(定年60歳)。
・ 素人工は入れない。「技量の確実な人を入門許可」が大原則。
・ 女性労働力は職種によっては非常に有効であるが、職安で女性採用募集したが、きたがらない。
→ 現状の女性作業員:アイトレーサ1+溶接3+組立3+船装3(TIG)十配管(曲げ)1+塗装2(ネタ番)+掃除(パートで週1回と作業量が少ない)
(2) 本社側の雇い入れに対するチェック
・ 常用の業者の入門申請は親方を信用して簡単な申請書にしている。
・ 加工職は時数管理べースで支払うから、本社で入門許可時点の技量見極めは厳重にやる。
・その他の職種では技量に業者の評価を信頼する。ウデが悪ければ業者自身が損するから真剣に選ぶはず。
(3) 協力業者の雇い入れ基準
・ 中途採用:まず職歴を見る。健康診断書提出を義務づけている。
・ 加工職は時数管理べースで支払うから、本社で入門許可時点の技量見極めは厳重にやる。
・ 1週間〜1ヶ月ほど試用期間をもち、本採用可否を判断する。
・ 試用期間中の単価は、本採用時の7割くらいが目途。
・ 技量を見損なって採用を取り消すときもある。その時は手切れ金を出す。
・ 雇用保険、労災保険への加入
→ 本採用後、社会保険は必ず加入、労災は、後払い。
(4) 採用困難職種
・ 取付工、溶接工:他社と競合。溶接は成り手が少ない(一箇所でじっと作業するのは嫌いな若手が多い。目先がかわるのが好き)。
・ 配管:まあまあいる。また成り手が多い。
・ 現図:外注で対応しているので余り問題なし。
(5) 定着率
・ 定年退職を補充せず、方向として、造船のように繁閑差の激しい業種では、本社工比率を下げるべきであろうと考えている。
・ 新卒定着率があまり良くないことも一因(7名採用して3名退職)で所要の技量をもっている人(即戦力)を採用することを優先。
・ この造船所の給与体系は、年輩者重視で若手に不満がでるのかも・・・。
・ 協力会社の若手もしかり(流動化、むしろ“流出”)。既婚者は定着率が良い。
・ 船殻の定着率が良くない。特に鉄工、理由は一人作業だからか・・・。
・ 子会社で再雇用する仕組みをつくった。
6. 技能レべル判定基準と考課基準
・ 作業別技能判定方法は、仕事をやらせてみればその日のうちに分かる。
・ 個々人の技量は、地元(県南)が多いので経験から分かっている。
・ 現在の資格所持状況
→ 溶接:NK、玉掛(1/3が保有)。
→ 取付:NK3級、ガス、玉掛(1/3が保有)。
→ クレーン運転:4人所有、内1人が玉掛兼務。
→ プレス取り扱い終了証:プレス(3人):本1+協2。
→ 高所作業車は船台、船装の90%、地上の20%が資格を持っている。
・ 賞与、昇給時は、日々の作業の動き(働きぶり)、能率、整理整頓ぶりを考慮
→ ブロックに作業者名を記入し、意識向上。
・ 考課は考課者の個人差がでるので危険。
・ 協力工については、特に査定していない。ただし、名前をきけばだいたい技量レベルは分かっている。
・ 技量向上運動:特になし。NKの級は更新時に上級になったりする。技量が上がっても給与には関係しない。
・ 技能向上を養成する余裕はない。
・ 先手を使うことで、彼らを養成していたのが、一人作業になって、それもできなくなっている。
・ 図面を見る能力は、若手が好まないので教育する気はない。
・ 本工のあるべき姿については、製造部長自身で暮れに呼んで説教(「仕事が人を育てる」との人生観)。
・ 人が育たないのは今後、問題である。1人棒心傾向で、先手を育てない責任は造船所にもある。
・ 業者は年功序列ではなく、能力給で払っているので、給与は上がらない。
・ 若手は資格取得に対しても意欲なし。やる気がおきる仕組みが必要。給与に反映されないのが大きい要因か。
7. スポット工採用有無と職種
・ スポットに対しては、1ヶ月毎に契約切り替え。3日前に書類(入門許可証、住所氏名、生年月日、および労災、社保、日造協団体保険加入済みか否か)提出を求め、免許有資格者を確認の上、入門許可書発行。これを元に、業者が「社員名簿」作成(資格とNo記載)し、本社に提出。本社と業者間では「工場請負基本契約書」を締結。この中に、機密保持、保証・賠償、就業管理、安全衛生管理に関する覚書も含まれている。
・ スポットでは仕事振りをみて3日間で解雇するケースもあり。
・ 構内協力業者は他の造船所の親方に依頼して借りる。単価は業者間取引単価(近辺業者)。(残念ながら、需給バランスで単価は若干上下するが単価はここが一番安いと認識)。
・ アゴアシつきでは雇えない。そんな単価ではないし、また遠くの業者では信頼関係が薄い → アゴアシ条件では本社べースでやるしかない。
8. 技能維持・向上と教育訓練
・ 新規採用時の教育、訓練をする余裕はない。経験者優先。
・ 安全教育は、本社が半日ほどやる。
・ 船台(取付、溶接)、艤装関係者(含む塗装全員)。年1回構内で講習会実施。
・ 協力会は人を指名して受講させる(費用は、業者負担)。
・ 設計:10名。ヤードプランは外注。設計外注先も高齢化が進展していて後継者問題あるも、差し迫った問題にはなっていない。
9. 外国人労動者に対する考え
・ 協同組合を設立して研修生受け入れを狙ったが、日本人労働者の仕事を奪うということで断念。規則どおりにやると座学が長く、制度そのものも緩和する要あり(特に、座学時間)。
しかし将来、考えざるをえなくなるだろう。
・ 未熟練労働者ではなく、技量所有者(経験者)の即戦力でないと駄目。
・ 外国人研修生でも技量、仕事に対する熱意、勤務態度などはさまざま。人をよく見てその人にあった仕事を与える必要がある。
・ 使う気はあっても、現実的には、失業率が高くなると、行政側が認めないのではないか。
・ 日系人を因島から10人採用したことあり。夫婦、子供連れが多かったが、仲間の情報で単価の高いところへ流れる傾向がある。技能はあったが仕事量がなくなったので解雇した。単価を払うだけで、家は自分の負担で賄ってもらった。
10. 請負条件、雇用流動化に対する考え
(1) 請負条件(協力業者から本社に対する要望事項)
・ 本社側からの請負条件で納期は余りうるさくいわれないが、品質(不具合)保証責任はある(「発生した仕事はすべて業者負担」と契約書にうたわれている)。設計ミスも業者責任施工。溶接手直しで再塗装しても追加はくれない。
・ 船台作業のため、尻拭いが多いが、契約書にうたわれていて追加工事費は出してくれない。
・ 道具:構内業者は本社もち。保護具は業者もち。ただし、塗装は器具も業者もち。
・ 単価をおさえられているので、業者としては何とか生産性向上の手をうたないとやっていけない。実際には職人の尻たたき。
・ ここは、搭載クレーン能力が小さいので、他社との太刀打ちが苦労である。
・ 鉄工は他造船所との相対で全体金額を決められるが、ブロック個数で決まる仕事量なのでキツイ。
・ 業者としては、やるべきことは全てやり尽くしたという自負がある。職人の技術力は、昔から結構高い。しかし、このままでは継続できない。
・ 受注した時点で、本社側からこれだけ赤字と示され、業者としても理解はできるので、やむを得ず従っている面がある。
・ 塗装:雨の日の保証はない。
・ コストを下げれば、次は、それだけ締めてくるのでは業者として経営のし甲斐がない。
(2) 雇用流動化
・ 若いときには給与はそこそこだが、年取ってから給料が低いと嘆く人もいる。
・ コストをいうだけでは若手のやる気にも悪影響を与えているのではないか。 従ってコストに見合った単価の人しか雇えない。腕が良くても給料が上がらないのでは、若い者に夢をもてというのが無理。
・ 業界全体でキャッチフレーズを考えるのはいいこと。ただし、実態とあまりかけ離れたことを誇大宣伝すると逆効果になる心配もある。
・ 若手は意欲はないが、役職をほしがる(格好つけたがる)。
・ 若年層は、仕事を覚えようという意欲をもっている人が少ない。責任感がない。
・ グループで仕事をさせればやるが、一人作業は嫌がる。
・ スポーツをしていた人は我慢強く、定着率がよい。
・ 40代の小学校の教師経験者がスポットの塗装工として入ったが、半年ほどで辞めた。造船は面白いが体力面で問題というのが理由。
・ この地区で造船が人気がないのは、かって造船所が倒産したのも悪いイメージとして残っている。
・ 造船業のPRが必要。船つくりは一般の人の目に触れなさ過ぎる。時代は一生就職するのを嫌う風潮。したがって雇用流動化は進展する。
(3) 内航海運の問題など
・ 内航船は、船齢が古くなり、代替したいのはやまやまだが、オペレータを説得できないので、銀行も融資しない。したがって新造需要が期待できない。まず内航船会社(一杯船主)を何とかしないと造船も浮かばない。
・ 5年間保証するオペレータはいるが、銀行は10年保証を前提にしていてギャップがある。
・ 船員も60〜70才の人が多く、それほど意欲もないから、このままでは内航船で、使える船がなくなる恐れが大きい。そうなった時に、はじめてオペレータも慌てるだろう。
・ このまま行けば、10年で造船所は1/3になるのではないか。
・ 大手が従来、中小がしていたクラスの船に進出しているので、ますます中小の経営は苦しくなるだろう。
・ 船型が小さいこともあって、居住区のユニット化は、まだやっていない。
(4) その他
・ 1人作業の功罪:後継者育成の点からはマイナス面が大きいのではないか。
・ 長期的には「人材払底」の危険性大、中小も合併など必要になるかも。
・ 年をとると能率が落ちるとの説は人によりけり。
以上