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[1] 提出資料
[2] 主な問題点
1)1つの州当局で扱う船舶の数が、サービスが縦割りで別々に提供されているため、多すぎる。
2)船舶の故障時に適切な対応が取れない。州当局は、勢い新たな船舶の提供を連邦政府に求めざるを得ない。
3)州と州の間に、船舶輸送サービスを行う上で連携がない。
4)島国という性質から、船舶交通は社会・経済活動に不可欠であるが、港のある州はわずかであり、結果としてサービス・ボート出サービスを代行している。
5)多くの島には桟橋やドック施設がなく、ドック建設に関する調査も行われておらず、現在の海岸線は流されてしまう可能性がある。
6)貨物船と旅客船を別々に購入する財政的余裕はない。
7)現在同国の船員は、正式な訓練を受けていないか、スキルアップしていない。
 
この後、プレゼンテーションに対し質疑応答に入った。主な質疑は以下のとおり。
 
質問 1
 石油の輸送について説明があったが、石油缶は旅客と別々に(石油を輸送するときは旅客を乗せないとの意味)輸送されるのか?
回答 1
 別輸送はしていない。原油、ガソリン、ディーゼル油、およぴ灯油はドックに運ばれ、同じ船の乗客は後方に積んでいる。
 
 
ミクロネシア連邦(プレゼンテーション資料)
 
ミクロネシア連邦における国内海運サービスに関する状況ならびに同国が直面する現在の課題や問題点および同国の抱える需要について説明する論文
 
 ミクロネシア連邦は、かつて太平洋諸島信託統治領だったコスラエ、ポンペイ、チュークおよびヤップの4地区で構成されるが、これは、独自の憲法を承認する政治過程を経て、アメリカ合衆国から独立を獲得した後にこの形となったものである。
 ミクロネシア連邦は、607の火山島および低地珊瑚環礁からなっている。こうした島々は、赤道から北緯13度線および東経138度から165度線の間の地域に点在しており、北西太平洋の100万平方カイリを少し超える地域を囲んでいる。しかし、ミクロネシア連邦の合計土地面積は、271平方マイルと狭い。年間平均降雨量は、西部の110インチから東部の380インチまで様々である。
 ミクロネシア連邦の総人口は、1994年国勢調査時点で約105,506人となっており、内訳はコスラエに7,317人、ポンペイに33,692人、チュークに53,319人、ヤップに11,178人であった。
 
I. 国内海運サービス
 ミクロネシア連邦の国内海運は、個別に運営される4事業で構成され、それぞれポンペイ、チュークおよぴヤップの州政府と、4つ目は中央政府が運営している。コスラエ州は、その行政管轄内に島を持たないため、海運サービスの提供は行っていない。
 州政府の管理する海運サービスは、70年代末にかけて建造された老朽化した同型船4隻によって提供されているが、これらはもはや、島間運航には適していない。
 ポンペイ州政府はこうした兄弟船の1隻を管理し、これを主要なポンペイ島と同州の離島全島とを結ぶ海運サービスに利用している。
 人口の最も多いチューク州は、他州より多くの島を有し、離島海運サービスのためにこれら同型船のうち2隻を管理している。
 同型船の4隻目は最西部のヤップ州が運営し、同州の離島に月1度の海運サービスを提供している。こうした便は全て月1度の運航となっているが、チューク州は例外で、同州の船は2隻ともアメリカ船級協会の船級レベルを下げたが、保守管理費不足のために2隻の状態を保持できないでいる。
 第4の島間海運事業は、運輸通信経済基盤省の海上輸送部を通じて中央政府が管理している。この事業では、島々の間の運航に、上陸用舟艇タイプの貨物船2隻を利用している。古い方の船の方が、船体の形という点で残る船より適しているが、1974年の建造であるため、経済耐用年数の終わりに来ていると言えよう。同船はいつ退役となってもおかしくない。2隻目は3年前に日本で建造されたもので、かなり新しく、IMO条約によってこの大きさの船に求められる必要装備を全て備えている。
 これらの6隻の船は、国内定期海運サービスを提供しており、各政府から多額の補助を受けている。その他の船、特に漁船は、特に当該地域で運航する船が日本やオーストラリアで乾ドック入りしているか、長期間故障して航行を再開できるために外部からのスペアパーツを待っている場合などに、各主要島から離島への一時的なピンチヒッターとなる。
 
II. 現在の課題および問題点
1. 国内海運事業の非連携
 ミクロネシア連邦は、ピラミッド型の政府組織を持つ民主国家である。全国レベルでは、中央政府が、その固有の義務および責任を果たしている。その1段下は州政府レベルで、中央政府から自治権を得ている。州政府にはそれぞれ独自の法律があり、中央政府の法律とは異なるものもあるが、各法の起源は、同国の基本法である国家憲法にある。3番目の層は地方自治体政府レベルである。これらも異なるレベルの統治権を行使し、個別の問題や課題を草の根レベルで取り扱っている。
 前述のように、各州政府および中央政府の提供する海運事業は、他とは独立して提供されており、このため各州間のサービスや交易を認めず、同一サービスを利用した連邦の一端から反対側への人や物の移動は存在しない。こうした物や人を連邦内で移動させるためには、国際海運便や航空便を利用しなけれぱならず、高くつくのが普通である。
 
2. 船員の正式訓練の欠如
 通常島間海運サービスと呼ぱれる事業の運営は、船に乗り込む乗員や事業の管理運営に当たる者の効率にかかっている。乗船している乗員のほとんどは、正式な訓練を受けていないが、船上と特定職種につくのに十分な海上経験を持つ。しかし、海運は経営事業であり、事業の経営的観点の訓練を受けていない者の場合、正式な訓練を受けていない者による理解や認識の不足というものが常にあるだろう。海運においては、新技術の出現が新しい国際レジームの導入と相まって、こうした新しい必要事項を利用し扱うという側面において、高度な訓練を受けた高級船員や乗組員が必須となっている。
 現在、ミクロネシア連邦にとって、1995年に改訂された1978年の船員の訓練基準、認証および監視(STCW)に関するIMO国際条約に従うことが急務となっている。漁師や船員にSTCW基準に関する訓練を提供するために設立されたばかりの新しい訓練施設は、既存のもの以上の訓練を提供することはできないだろう。
 第一に、同施設は、下級コースを実施している一方、上級コースに関してはまだ開発中である。第二に、こうした上級コースを提供するのに関連して使用する必要のある機器や設備が明らかに必要である。
 したがって、STCW条約が完全に発効する時までに、連邦の全登録船に乗り組む現在の乗員の全員が、いずれにせよ、種類を問わず正式訓練を受けることはできないことは明らかである。連邦にとって大事なことは、何とか前進し、船上スタッフの全員に、国際航海に従事することが必要となる船舶に乗り込むことを考慮に入れた何らかの正式訓練を受けさせるようにすることである。
 
3. 島々の自然水路地形学
 ミクロネシア諸島は、高地火山島から低地珊瑚環礁まで様々である。しかし、これらの島の多くには、自然の開口部がたくさんある非常に安全な港があり、周辺の岩礁の深さも十分で、最小クラスのヨットから最大クラスの超大型タンカーまで入港できる。
 しかし、礁湖の有無にかかわらず、岩礁に裂け目がなく、また船の入港できる岩礁通航路が全くない島もある。貨物や乗客が遅延なく容易に乗り降りできるように、岩礁のボート水路(boat pass)の近くに船を着けなければならないこともしばしばである。船は、貨物や乗客をボートや艀に積んでいる間、止まって漂流しなければならない。こうした場所の多くでは、ボートは、村落や集落からかなり距離の離れている場合の多い困難な岩礁通航路を乗り越えなければならない。
 周辺岩礁のある島では、ボートは入る時も出る時も、岩礁にブレーカー(breakers)を投げ込まなければならず、これは貨物にとってはかなりリスクとなり、乗客にとっても不快で危険の可能性もある難しい操作で、転覆や沈没する結果となる場合もある。さらに、貨物の所有者や乗客からは、貨物や家族が濡れてしまったとの苦情が寄せられている。転覆事故があった場合は、運び込まれた貨物が全て失われることが多い。
 礁湖の中に安全な通航路や錨地を持つ島々のうち、桟橋やドッキングエリアを持つものは多くない。このため、船舶は、船と岸の間にバージサービスを提供し、船のサービス・ボートで物や乗客を輸送しなければならない。政府は、全乗客および貨物所有者に対し、船と岸の間の安全な輸送手段を見つけるのは、実際は貨物所有者や乗客自身の責任であることを通知し、自身の責任を免除している。これまでのところ、政府の運賃に含まれるこの免責条項の合法性を争う法的問題は発生していないが、これが法廷において説得力を持つものであるかどうかは疑問である。
 
4. 輸送力と費用側面
 政府が受け入れてきたサービスの水準は、1ヶ月あたり1便あたりというところのようだ。この水準は、各政府にとっての規模の経済性に基づくもののようだ。国内の船便は、貨物の量が少なく、乗客スペースに対する需要が高いことが特徴である。我が国の保有する船種は、我が国の必要を満たしておらず、船の経済耐用年数が過ぎているという事実は、運営者にとっては何らの救済とはならず、不安材料になっている。
 適切なタイプのサービスのために適した大きさのものを見つけるということは、新しい国際レジームの要求することを十分考慮に入れた上で、当該行政部門の主要な責任である。船の大きさを増すことによって、貨物需要だけでなく、おそらく乗客需要も高まるであろうが、船舶の運営費用も大きく増大するだろう。この運営費用こそ、有用なプロジェクトに利用できるかもしれない既に貧弱な基金が、国内船便の運航のみに充てられてきたという恐れを政府に与えている。
 ヤップ州の国内便は、補助金の最も少ない唯一のものであるかもしれないが、これらの全てに共通する1要素がある。それは、いずれも同種の老朽化した船舶を利用しており、現時点でより経済的な種類のものに換える必要があるということである。
 
5. ミクロネシア諸島の特徴
 ミクロネシア連邦と呼ばれる地域は広大であるが、その殆どは水域で、200万平方マイルの海洋である。土地面積は小さく、271平方マイルしかない。島の中にはお互いに見える範囲にあるものもあるが、残りは非常に離れている。それでも、安全な島の港を離れると、すぐに開放水域に出てしまう。このため、このサービスのために建造する船舶は、海の通常の厳しさや危険に耐えられるものでなければならず、乗組員は、考え直すことなく、容易にこうした危険や厳しさに堂々と対処できるよう、特定の国際的資格認定を満たす者でなければならない。
 
III. 組織
1. 目的
 海上輸送部は、ミクロネシア連邦中央政府の運輸通信経済基盤省内に設けられており、同国の海事行政に責任を負う。
 
2. 活動
 海上輸送部は、ミクロネシア連邦における海事安全プログラム行政に責任を負い、これには、船舶の登録や船舶所有、ミクロネシア連邦内の登録船舶その他の調査および検査、船員・海運スタッフの認証、安全水準の向上、船舶操縦術、各州間および国際海運サービス、ならびにこれを効率化することによって、同国の各州間交易の支援、経済統合、国家団結の促進、海上輸送の運営管理のあらゆるレベルで働くミクロネシア連邦市民の訓練および配置の向上を行うことが含まれる。
 同部門は、連邦内の異なる州運輸局を通してその活動を計画、調整、モニターおよび管理し、これには全体的な海上輸送システムおよび海運業の開発および改善や、各州に対する物流海運サービスや技術支援の提供も含まれる。
 同部門の現行プロジェクト/活動は、連邦内の老朽化した商業船を交換するために、援助国からの支援を求めることである。ミクロネシア政府は、漁業プログラムに基づき、1997年、日本政府より船舶1隻(カロライン・ボイジャー号)を得た。
 
3. 職員
 海上輸送部は、運輸通信経済基盤大臣の全般的な指揮下にあり、海上輸送部次官補に直属している。同部門は、海上輸送システム開発支部、海事安全・検査支部、海上輸送運営支部および海上輸送技術支部の4つの主要支部で構成されている。
 次官補は、同部門の全体的な管理および運営について、大臣に報告責任を負う。次官補は、乗組員の雇用や解雇を含む、同部門の管理下にある船舶の効率的な運営管理にも責任を負う。また、政府所有船舶の乗組員を対象とする海運サービスシステムの適切な管理にも責任を負う。
 海上輸送システム開発支部長は、海事法制や規則および基準の作成(法務省との協力において)や、連邦内において海事安全その他の必要プログラムを実施、促進および向上するために必要な他のサービスの実施・提供にっいて、同部門次官補に対して責任を負う。
 海事安全・検査支部長は、法定の調査や検査を適切に行うことにより、ミクロネシア連邦領海内の全登録船舶および海事構造物や設備の全ての安全性について、次官補に対して貢任を負う。
 海上輸送運営支部長は、同部門の直接管理下にある全政府船舶の適切かつ経済的な運営管理について、次官補に対して責任を負う。
 海上輸送技術支部長は、同部門の直接の運営管理下にある全政府船舶の適切な保守管理について、次官補に対して責任を負う。
 
4. 沿革
 海上輸送部は、1979年、ミクロネシア連邦政府の発足時に、資源開発省の下に設立された。ミクロネシア連邦が何年もかけて発展するにつれて、同国の海運業および輸送システムのニーズや要件を効果的に取り扱うために、同部門を省に昇格する必要性が認識された。運輸省が作られたのは1987年である。同省は、その責任範囲を表して、今日では運輸通信経済基盤省と呼ぱれるようになっている。
 
IV. 結び
 ミクロネシア連邦政府は、老朽化したマイクロ級船隊の経済耐用年数が終わりとなり、維持費が高くつくようになっているため、これらに替わる適当な船が得られるよう、援助国からの支援を活発に求めている。現在ヤップ州、チューク州およびポンペイ州で運航している4隻のマイクロ級船舶は、老朽化しており、より適当な種類やクラスの船舶との交替が必要である。








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