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《中村》

21世紀に入り、身近な地域でユニバーサルデザインについて、特にトイレの件で、作る側と使用する側での差が問題になってきた。これには、初期の設計の段階から障害別の当事者の意見をまず聞くべきと考える。

福祉のまちづくり整備事業懇談会が今年の初めに行われた。肢体不自由、視力・聴力障害等の当事者と、行政、設計者側が、大田区蒲田に新しくできた第三庁舎を参考に、今年の秋に完成する区民の憩いの施設「大田区民の森」のバリアフリーについて話し合うためである。2度目の懇談会であったが、すでに施設の80%以上は完成してからである。

今までにも生じた問題だが、公共的に作る建物には使用する側の意見を聞く必要がある。参考とする当事者の素朴な意見を反映すれば、同じ予算内で誰にも便利なユニバーサルデザインを100%生かすこともできるようになるのではないだろうか。21世紀の時代には最も必要とされることである。

ユニバーサルトイレの完備とは、もう、障害者に特別のトイレを作ればいいという発想を改めるべきだということである。私たち車いす使用者は、誰でも使う一般トイレの入口のドアをあと15cm広くするだけで違う。そのようにして私たちがどこに出かけても使用できることが原点と考えている。

基本的に車いすトイレはもういらない。この点に多くのスペースや予算を使うのではなく、誰でも使うトイレの内外を広くし、床下面は30cmあけて安全確保、トイレごとに個性を持たせるほうがよい。ウォシュレットや点字の案内などを備え、スペースの隅には大人も子供もおむつ交換できる場があり、オストミーの人、赤ちゃんといっしょの人、介護者といっしょの人、その誰もが使えるトイレ。そんな女性の化粧直しと同じくらい楽しいトイレにしたいと夢見ている。

 

《森》

システムに関して、視覚障害者の立場から様々なお話をさせていただいた。

それにつけても、最近特に感じるのは利用者のマナーがとても悪いということ。新しいきれいなトイレでもすぐに汚してしまう。マナーの向上につながるようなことができればと特に感じている。

 

《小林》

日本財団、日本トイレ協会のお力によりユニバーサルトイレの研究会が持たれ、障害者にとっては大変ありがたいことと思っている。障害者は、トイレのことを考えるとなかなか外出も思うにまかせず、社会参加もできないのが現実だ。

今回の「ユニバーサルトイレ研究会」の試みについては、障害者の社会参加に明るい見通しが持て、安心して外出のできる社会の到来と考えている。ユニバーサルトイレのできるだけ早い実現を期待している。

 

《小口》

研究会に出てから、トイレの利用のしやすさについて注意を払うようになった。新幹線や飛行機やホテルやデパートなどのいつも使っているトイレでない場合、水を流すところはどこだろうと、戸惑うことが少なくない。

水を流すのは、レバーだけではない。タッチセンサーであったり、ボタンであったり、また自動で、レバーの類がないトイレもある。水の流し方がわからず、戸惑うことも少なくない。トイレの中だけに、誰か人を呼ぶこともできない。

今度一度、アイマスクをして初めて行くところのトイレを使ってみたいなあと思う。

 

《長嶋》

車いすの障害者といってもいろいろな人がいるので、そのすべてに合うようなトイレを作るとなると大変難しいと思う。作る人が障害を持った人なら少しはわかっていただけると思うのだが、「ふつうの人が作るのだから」と、私は作る時点から考えてしまう。作る人も車いすに乗って街へ出て、どんなトイレがあるのか、一度入ってみるといいと私は思う。

 

 

 

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