考え方によれば、障害を持った方々もピラミッドのような構造になっている。ちょっとした手摺りがあれば楽になる方、入口が10cm広がれば問題なく使える方が、障害を持っている方の裾野に相当広く存在している。一方超高度のトイレが必要な方もいる。そうしたトイレに非常に不自由している方の比率は何%くらいあるのか。5%くらいと想定して、5%の方に満足してもらうために裾野の整備が進まないということのバランスをどの辺でとったらいいのかという問題も出てくる。超完全バリアフリーのトイレをどのくらい用意するのか。あるいは、だれでも使えそうなトイレの折り合いがどこにあるのか。これから利用者の意見を聞きながら考えていかなければならない問題だ。トイレを作るごとに、問題が三つ四つ出てくる。奥が深い話だと思っている。
[バリアフリーのまちづくり]
平成5年頃、高山の観光客が一番減り、どん底であった。その時の問題提起から新しい市長が誕生して、今のまちづくりが進められた。なぜこのようなまちづくりになってきたか。
市の人口の約8割が観光に関わる収入により生活している。観光誘致が市にとって極めて大切な役割を果たす。その際どんな層に主眼を置くかは、人口構造から考えると簡単にわかる。今の若い人世代は男女合わせて150万人くらい前後、若いOLが10年段あるとすると75万×10で、マーケットは750万人に限られる。一方高齢者は20%、人口的に見ると、1億2〜3000万の20%、2500万人くらいの方々がいる。その方々は月曜から金曜までの5日間が旅行のシーズン、750万人のOLは土日が中心で2日間、マーケットの規模が違っている。
旅行の潜在需要2500万人×5日間の巨大なマーケットがある上に、高山市の人口構成も高齢化している。そこで、高齢者の行きやすいまちづくりをすればいいんじゃないか、高齢者対応のまちづくりをしようということで研究を始めた。テーマをもって作ったのが、“住みよい町は行きよい町”バリアフリーのまちづくりということであった。きた方々が満足して、またきたいということで、ずいぶんにぎわっている。まちも活性化してきた。
一方、ソフト、お客さんを迎える側の心の問題がある。ハードのバリアとともに心のバリアをはずしていかなければならない。店、旅館、観光施設に、車いすや障害を持った方でも気兼ねなく動ける環境を作ろうということで、マニュアルづくりに熱心に取り組んだ。そのため最近はサービスの満足度も高まってきた。マーケティング的にいえば、CS (consumers satisfaction)運動というのがあるが、これからは納税者が満足するまちづくりが結局いいまちになっていくのではないかと思うし、行政はそれを目指すべきだと考えている。