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1 「ユニバーサルトイレ」って、なに?

 

草薙威一郎

(株)ジェイティービー本社営業部ノーマライゼーション推進マネージャー

 

●ユニバーサルトイレは今日的課題

 

最近は街に出かける、体の不自由な人や高齢の人が増えてきました。街に出かけるだけでなく、遠く離れた所へ旅に出るようにもなってきました。それには、人にやさしい建物を作る「ハートビル法」(1994年施行)やバリアフリー交通整備のための「交通バリアフリー法」(2000年施行)が整備されてきたことも大きな理由に挙げられます。しかし、改めて考えてみると、「バリアフリーな社会」は、それ自体を作ることが目的ではないといえます。そのバリアフリー化された社会の中で、誰もが自分の選択した欲求や願いを生かして、生き生きとした人生を歩めるようにすることが目的です。

ところで、誰でも家から出られるということは、誰でも利用できるトイレが必ず必要になるということです。もちろん、世界にはトイレという建築物を必要としない社会もあるにはありますが、現代の日本社会では、まずそのような状態は想像できません。そこで、バリアフリーな社会を作ろうとする時、「誰でも使えるトイレ」すなわち「ユニバーサルトイレ」とは何を意味するか、を考えることが一つの出発点となります。

これまで何十年もの間、公共のトイレは、国内でも海外でも非常に多くの設計者・施工者・管理者などが試行錯誤を重ねながら研究し、また実際に多くのトイレが作られてきました。我が国でも一般的な「公共トイレ」の設置やメンテナンスの技術は、近年飛躍的に向上し、世界的な水準にまでなってきました。一方で、一般的なトイレを利用しにくい人のために、「多機能トイレ」(身障者トイレ、多目的トイレ、車いす用トイレ、ゆったりトイレなど名称は様々)も数多く作られるようになってきました。

しかし、ほぼ完成の域にまで達したかと思われるトイレでも、「右半身付随の場合には手摺りがなくて使えない」「目の不自由な場合には、水を流すボタン操作がわからない」「手摺りが邪魔をして便器に移乗できない」「トイレが狭くて回転できない」など、数多くの利用者の不満があります。つきつめると、すべての人に適用できるトイレのモデル(典型)を、一つの形で作ることは不可能ではないか、というのがトイレ作りに携わる人の偽らざる気持ちでしょう。

 

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多機能トイレ。木の暖かさを生かしたデザインが印象的。

 

 

 

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