ユニバーサルトイレを考える
ユニバーサルトイレ調査報告書
■調査の背景と目的
高齢者・障害者の社会参加や社会的行動を担保するには、制度や施設を整備する必要があります。このことについての理解が、近年、かなり進んできました。平成6(1994)年には「ハートビル法」が制度化され、公共性の高い建築物に対して、高齢者・障害者に配慮することが義務づけられました。その後、全国の自治体で“福祉のまちづくり条例”が定められ、平成12(2000)年には「交通バリアフリー法」が施行されました。高齢者・障害者が社会生活を送る上での、一定の条件は整ってきたといえます。
この間、高齢者・障害者の社会参加を実現するための考え方は、バリアフリー、ノーマライゼーション、ユニバーサルデザインと変化してきました。高齢者・障害者が社会参加するための条件整備を、“福祉”とする考え方から、“人権”とする考え方に、微妙に変化してきた流れともいえます。
“誰もが安心して自由に行動できる地域社会”を作るには、何をすべきなのか。この問題を考えるにあたり、公共トイレに着目して、本調査を行いました。法令が整い、考え方に対する共通認識ができつつある中で、今後はそれをどのように具体化していくかが問われているからです。これは、その具体策を公共トイレをテーマに実現するための試みだといえます。本調査では、“ユニバーサルトイレ”という新しい概念づくりに向けて様々な角度から検討を行いましたが、それも、高齢者・障害者に配慮した公共トイレの改善・普及を図っていきたいという思いからにほかなりません。
“ユニバーサルトイレ”を検討するにあたっては、各専門分野で実践に携わる5名の方に委員をお願いしました。その顔ぶれは次ぎのとおりです。
小滝一正…長年、ノーマライゼーションの研究を行っています。
小林純子…実際に調査をし、設計に携わってきました。
川内美彦…車いす使用者であり、建築家として、ユニバーサルデザインに関する多くの提言を行ってきました。
小山恵美子…視覚障害者団体や国際交流団体で活発に活動しています。
草薙威一郎…障害者にとっての旅行のあり方を追及し、実践してきました。
この報告書は、委員会での検討、アンケート調査、研究会での意見交換、を整理し、まとめたものです。
なお、六つの論考・報告については、委員会や研究会での検討・意見交換を踏まえつつ、各執筆者が個人の責任において書いたものであることを付け加えておきます。