ちょっと例が違いますけれども、信じるということは怖いことなんですけれども、皆さんは多分、小さいときのというか、成長期の教育で、人類、人間というのは1つの個体であり、種であると習われたと思います。今の生物学のある部分では、皆さんは合成されている複合生物であると。皆さんの体の中には別の生き物がいてというか、別の生き物ではなくて、たんさんの生き物が集まって、皆さんができていると。そういう理解なんですね。例えば今、精子の話が出ましたけれども、精子と同じで繊毛が生えているのにのどがありますね。この繊毛は別の生物だと。そういう理解。ハチもそうです。チョウチョウもそうです。みんな、そうです。生物というのは、そういう複合的な共生関係が発達して、それぞれの個体ができるんで、単なる遺伝だけで形が変わってくるものじゃないということが相当の範囲でわかってきました。
それから、個体とか、群体とか言いますけれども、よく考えてみると、植物に大変失礼なことをしているんですね。個体・群体と我々が言っている言葉は、植物には通じないですよね。どこからどこまでが個体なんですか。
【西田氏】 単純に、そこに生えている木は、それで個体ですけれども、植物のややこしい点は、クローンというのをつくるわけですね。クローンというのはクローン人間などが問題にされるように、非常に悪いイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、実際は、同じ遺伝的な性質を持った、植物で言えば株ですよね。例えばササの仲間というのは、ほんとうに広い範囲で、ずっと根茎を伸ばして増えていきますね。ほんとうに巨大なクローンをつくるわけです。そうすると、どこからどこまでが個体かというと、つながっている以上は多分、個体ですよね。
ササの場合は、ちょっと話はそれますけれども、一斉枯死という何年かたつと、突然枯れるということがありますね。あれは、クローンがまとめて枯れるのかというと、そうではなくて、例えば私が南米に行ったとき、南米にもササが生えているんですが、何百キロ離れたところで同じように枯れているんですね。要するに、それはとても同じクローンのはずがないわけで、なぜ、そういう離れたところにある群集が、全部1度に枯れるのかということもわかってないわけですね。