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トータルの量がわからないのに、どっちがどうだということは、これは非科学的だから、質問は嫌われるんですけれども。物理学の世界では、仮定した量の中で議論を進めますけれども、現実の世界ではトータルがわからない。

だから、やらきなゃいけないことや疑問がいっぱい残っているということを子供たちに教えることは非常に難しいんですけれども、そのあいまいさというのは、物理的なあいまいさとはちょっと違うんですけれども、複雑系のあいまいさというか。つまり相互作用系がたくさんあって、こっちがわからないブラックボックスがたくさんあるということも含めた、オープンエンドであっても、ちっとも構わないという考え方が、総合の学習のときには必ずついてまわると思います。何せ単純なことをやっているんじゃなくて、複雑なことをいっぱい組み合わせて、ストーリーをつくって追いかけていくわけですから、あれも不十分、これも不十分となってきますが、その不十分の中に真実があり、子供たちの伸びる余地があるということになる可能性があると思うんですね。

植物の進化がわかってきたときに、顕微鏡でのぞいて、さっきのあんな構造が、4億年前の細胞がよく見えたじゃないですか。それから、マスレーションという木の気孔ね。穴なんかも出す技術。ああいう技術革新と先生たちの学問の進展とどういう関係があるか。何か具体的な植物での材料がよく見えてくるんですね。

【西田氏】 技術革新、例えば私は植物の化石を研究していますから、そのお話をさせていただきます。皆さんは化石というと、葉っぱがぴしゃっと押されたものを連想されるかもしれませんが、先ほどのリニアのような組織が見えるような化石がありますね。その標本というのは、岩石標本をつくられた方もおられるかもしれませんけれども、あれと同じように薄く切って、光が通るようにして顕微鏡で見るということをずっとやってきたわけです。けれども、今は、ほとんどの材料で新しい方法が使えます。岩を酸につけて溶かしてやると、植物の組織というのは、少し炭質物がありますから、溶けないで残るんですね。それでエッチングをする。エッチングしたところで、浮き出た組織を、プラスチックのアセチルセルロースの透明フィルムに移しとるという技術があるんです。フィルムをアセトンで溶かして組織にかぶせ、乾かすと、ぴゅっとはがれるわけです。そうすると、きれいな切片標本ができます。

 

 

 

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