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だから、先生たちも、ほんとうに申しわけない言い方かもしれませんけれども、子供たちに教える職業じゃなくて、子供たちを育てる職業であるということをもう一度、気がつかれれば、子供たちに興味を起こさせ、夢をいっぱい起こさせ、先生が困るようなことをいっぱい言ってくれるようなことになればいいと思うんですね。

それは今の学校の教育ではなくて、学習の姿勢にある。学校の教育ももちろん、それは否定はしません。しかし、姿勢にあるということは、例えば、この間、僕はNHKの『デジタル不思議質問箱』という5時間番組に出たんですけれども、出てくる質問がEメールやファックスで来ますけれども、ほんとうに困ることばっかり聞いてきますね。学校で一切教えてないから。なぜかというと、学校というのはウェル・ディファインド(よく定義)されて、よくわかるようになったものだけを教えるという選択で構成されているというのが制度教育なんですね。私は学校の制度を批判するとか、そういうことでなくて、科学というのはそうではなくて、不思議、不思議、不思議で押していくということで、子供に無限の能力を期待できるということになると思います。今日のお二人の先生方のおもしろさというのは、実に、その根底に迫るというか、根底そのもののディスプレイであったと私は思っているわけです。

ここにディセミネーション(dissemination)という言葉を書きましたけれども、これはちょっと大きな辞書で、ぜひ帰って、ご自分で確かめてください。科学におけるアカウンタビリティーと全く同じであります。要点は、わかりやすく正しく人に説明することができるということが科学の領域なんですけれども、それが今の科学の世界では、ほとんど忘れられている。火山活動が起こって、火山学会は年間を通じて、すごいボリュームのシンポジウムをやります。次の年には、シンポジウムが何もない。3年目になっても、何も出てこない。三宅島だって、島の人に聞くと、何の説明も聞いていませんと。つまり、専門家が科学として火山を見ただけであって、フィードバックされていない。という事情も、科学の1つの側面である。皆さんは実はそのはざまにはまってしまって、科学の世界で専門家たる科学者がサボっていると。そういうふうに思い込んでしまった中で、子供たちとのギャップを埋めなければいけないというのが先生たちのお仕事ではないかと、また失礼ながら思っているところです。

 

 

 

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