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ですから、私たちが知りたい情報だけをポンと取るのではなくて、お話できるような雰囲気をまず作るということ。それは手術を送り出す患者さんのいる病棟やいろんな病棟では難しいところもあると思いますけど、やはり皆さんで相談し合って、この患者さんがとても気持ちがつらいというときがありましたら、やはり受け持ちナースでもよろしいんでしょうけれども、だれか1人頑張ってお部屋に伺ってくるわみたいな形で突破口を設けていっていただけたらいいなと思います。

私たちは患者さんにお話するときに、やはりどこかに触りますよね。タッチングすると言うのですか。どこかに触れながらお話するので、ただ正面でお話するというよりも、「昨日眠れなかったの、何でやろなあ」とそういった形でお話しながら、手を握ったり、肩を触ったりとか、「ここが昨日痛くて、寝られなかったのかなあ」とか言いながら、体を触ったりとか、そういったことをしていきますよね。ですからただ対面式というよりも、どこか触りながら、またお話行くときには、患者さんが寝ていてもお話しやすい場所に私たちが立つということです。首を曲げなきゃとか、天井見て振り返らなきゃいけないようなところには、私たちは立たないということですね。

もし時間があるのでしたら、あの看護婦さんさぼっているわって思われるから嫌だっていう方も前いらっしゃいましたけど、やはり病棟内で話合って椅子ぐらい1個持っていって、寝ている患者さんの目線で、ちょうどしんどくな目線に椅子を持っていって、今からお話を伺わしてくださいような雰囲気でやっていただきたいなあと思います。難しいって言ったらそれまでですけどね。どこかホスピス・マインドを持ったケアに関わっていっていただきたいなと思います。

 

松島:ありがとうございました。渡辺先生、医師の立場からいかがでしょうか。

 

渡辺:そうですね。緩和ケア病棟と一般病棟の違いと言いますと、緩和ケア病棟と言うのは、ゆったりしているという点。あるいはコミュニケーションの場が、面談室とか、あるいは談話室がありまして、そういった人との関係性をゆっくりできるという点ですね。あるいは家族と一緒になってできるといったメリットというのはすごくあって、それが末期には特に大事な点ですので、それは非常に重要だとは思うのです。それ以外に関しては、一般病棟も十分できるし、またそういうようなケアの仕方をしていけばいいんのではないかというふうに思います。

先日、デーケン先生に連れていっていただいて、アイルランドのホスピスをずっと見て来たのです。アイルランドの人たちがロンドンの方のセント・ジョセフへ行ったときは、何とかしていい生き方、いい死に方をさせないといけないと。要するに不幸な死に方をさせないという気持ちがホスピス・マインドの原点になったのではないかということを現場で行って、つくづく感じたわけです。

ただ、一般病棟ですとどうしても治療型になります。治療型というと、看護婦さんもそういうふうに慣れてしまうので、どうしても患者さんが下の立場に立ち、医療者が上の立場に立つということがありますので、そういった上下関係をどうやってやって防いでいくかということは、今、久保山さんがおっしゃったことのいろんなケアの視点というのが、非常に大事ではないかと思います。

私自身はどんなふうに考えているかと言いますと、皆さんのご批判を仰ぎたいのですけれども、以前臨床心理士の方と食事をとっていましたら、私たちは患者さんのエネルギーを吸い取っているのではないかと言われた。考えてみますと、私たちはエネルギーがまだいっぱいですので、2、3センチの幅のエネルギーの人と私たちの10センチの幅の人が、そのままぶつかったら、やはり患者さんはエネルギーを吸い取られてしまうっていう感じを持つと思うのですね。

 

 

 

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