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清水:最近ですが、中学生や小学生がホスピスに見学に来て、講義を受けに来てくれているのです。そしていろいろお話をすると、思った以上にみなさん本当によく聞いてくださって。高校生になりますと、感情的にだいぶ豊かになってきますので、涙を流しながら聞いてくださる。小学生も手術室に行って、お腹を開いても人間は死なないのですかというようなことを聞いてくるのです。とても驚かされることがいろいろあるのです。もう少しホスピス緩和ケア病棟とか病院というものが地域に開かれて、もっと開放的になって。どうしても今はおじいちゃん、おばあちゃんはご自宅では亡くなりませんから、ご病気になればみなさん病院に入院しまして、なかなか病院には子供さんを連れてきません。そうすると本当に子供さんは、人が死ぬという場面をご体験なさらないで、ニュースとかそういうもので死を感じます。病院にどんどん連れてきてもらって、おじいちゃんが東京にいれば東京に遊びに行って、福島にいれば福島に帰ってきていただいて、という中で自然な形で触れていっていただきたいと思っています。

 

南:そうですね。まだまだこれからみなさまがたのお話をうかがいたいところなのですが、時間がかなりオーバーしてしまっておりますので、最後に先生方に、今日会場に来てくださいました方へのメッセージも含めまして、締めのひとことを頂戴したいと思います。それではこちら、鈴木先生から。

 

鈴木:誤解のないように、2点ばかり補足することでそれに変えさせていただきます。まず、先ほど宗教への期待ということで話が出ましたけれども、あの場合の宗教というのは、いわゆる既成宗教、仏教とかキリスト教とかの教団的な組織をイメージしているわけです。例えば、夏に恐山に行ったりしますと、あの辺りでは「死んだらお山さ行く」という言い方があって、死んだ霊魂はお山に登るというのです。そしてまさに先ほど波平先生がおっしゃったように、登った先で供食といって先祖の霊のいるところでご飯を一緒に食べたりして、そこで死者と交感するというようなことがいまだに行われています。つまり自分が死んだら、またそこに──お山さ行くわけです。そして自分の子孫がまた来る、という観念をもたれている。あるいは、巫女さんのところに行って、巫女さんの教えに乗っ取って救われている人たちもたくさんいるわけです。死というものに対してもそうです。ですから、私が宗教に対してと言ったところ、または田宮先生が先ほどおっしゃったことは、既成宗教がもっとしっかりしてくれなきゃ困るじゃないか、というあたりを言いたかったのです。現実の人々はすでに、いろいろなところで宗教的なものに救いを得ていることも確かです。

そして、最後にひとこと。先ほど宮家先生がおっしゃった中に、岸本ひでお先生のお話が出ました。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、宮家先生の先生である岸本ひでお先生が、がんと戦った10年間をまとめた「死をみつめる心」という本を講談社文庫から出していらっしゃいます。宗教学者が自分の死をみつめたところで考えた、まさに自己の死をみつめた記録があるということですので、もしご参考になれば読まれたらよろしいかと思います。以上です。

 

南:ありがとうございました。では、清水さん、お願いします。

 

清水:はい。今日はたくさん先生方のお話を聞いて、勉強になりました。私はホスピスにおりますが、今日はうちのホスピス・ボランティアも来ております。ボランティアがいて、宗教家がいて、いろんな人がいてホスピスを支えてくれています。どうしても今までの医療は、医師が主体となって看護婦がいて、という形でパタラリズムで来ましたが、やはり医療の中にいろんな人が入ってくださって、より患者さんに近い目で見てくださる。

 

 

 

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