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不登校の理由が、本人にもわからなかった高校生

《タメ塾》工藤定次

 

不登校期間 高校1年5月〜 15歳男子

 

《家族構成》

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当事者について

住まいは、ある地方都市の高級マンション。5LDK。オートロック付き集合住宅。周囲は住宅街で、比較的緑の多い閑静な地域。

父母の話によれば、高校1年生(当時15歳)の5月上旬から不登校。理由は、学校の担任にも、親にも不明。何も“これ”といった理由は考えられない、とのこと。小、中学校時代はサッカー部に所属し、友人もたくさんいたし、性格もおとなしいがそれなりに良く、成績も中の上。若干体も小さいし、他の同級生よりも子どもじみていたかもしれないが、気になるほどではなかったとのこと。

 

―経過―

父親との面接でわかったこと

M君と父親が5、6回相談をしていたある女性カウンセラーが「タメ塾」を紹介したことによって関係を持つことになる。まず、父親がタメ塾に面接にみえる。そして、以下のような状況が明らかになる。

・1年半、一歩も外に出ていない。完全な引きこもりの不登校。

・母親、姉の行動を規制。母親も、ここ1年間ほどは一歩も外出を許されていない。

・姉の外出は、学校の行き帰りのみ。日曜、祭日は母親と同様外出を許さず。

・父親は規制されないが、定期的行動をしないと母親と姉が何をされるか不安なので、ほとんど定時帰宅。

・本人の気に入らないと壁を壊したり、物に当たったり、そして時たま母親や姉にも殴る蹴るの暴力。

・CDを集めるのが趣味で、新作CDを月に100枚前後父親に買わせる。

・高校はすぐにやめたので、学校との接触はない。

・母親は心労のためか、円形脱毛症に。

・姉だけをアパートにでも避難させようかとも考えてはいるが、その反動がどう出るのかを考えると、実行はしづらい。

私は父親の話を聞いて、原則的には時間をかけて本人との接触を心掛け、本人との対話によって“外での活動”を説得するのだが、M君の場合は、

・母、姉を人質にとっていること。

・オートロック式の集合住宅であること。

・家庭内暴力が長期化していること。

・Yさんの家庭をめぐって、他者との接触がいっさいないこと。

 

 

 

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