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また、「悩んでいる=恥ずかしい」という劣等感を強く感じてしまい、自分の気持ちをどうしても話せません。そして、せっかく心配してくれている人に対して何も話せない自分に対する自己嫌悪感。さらに、自分の行動が停滞しているイライラと憂鬱など、何もかもがゴチャゴチャに絡み合っている状態でした。

 

昼夜逆転の生活

結局、本当の気持ちは何も話さないまま学校を退学しました。それからは、外部とのかかわりは全くない期間が続きました。外部とのというよりも、自発的に人とのかかわりを避けていたと言ったほうがいいかも知れません。

買い物のために外出したりするのは、特に苦痛ではなかったのですが、だれか知っている人に会うと、「何もしていないのは怠けている」と見られるのではないかと不安でした。特に同世代の人、地元の人など、私を知っている人に会いたくないと感じていました。

その頃には、父も自宅へ戻って来ていたのですが、両親の話といえば、「これからどうするんだ」「何か始めたらどうなんだ」の繰り返しでした。両親には、非常に申し訳なく思う気持ちを持ちながらも、私にとってはかかわりを避けたい相手になっていました。

両親と顔を合わせたくないという気持ちや、自分が何もしていないことに対する後ろめたさから、生活時間が昼夜逆転し、朝方まで起きていて昼過ぎに起床するようになり、睡眠時間も不規則になっていました。そんな生活リズムを繰り返し、だれかに相談するわけでもなく、自分ひとりで悩んでいる状態のまま、ただただ時間だけが過ぎてしまう。そんな生活が続きました。

 

あるカウンセラーとの出会い

そんな生活が3年ほど続いた頃、自分の中で多少変化がありました。「どんなに頭で考えても、何も変わらないのではないだろうか?」「答えの出ないことを考えているのではないだろうか?」

引きこもっている間、人を避け、ひとりで考え続けた結果が出かかってきたのです。

しかし、この結果は自分の中でどうしても認めたくないものでした。なぜなら、これを認めてしまうと、今までの3年間のつらく苦しかった時間がむだだったと感じてしまうからです。どんなに考えても、悪循環で同じところをグルグル回ってつらく苦しいのに、そのことがどうしても認められませんでした。自分の中で、ゴチャゴチャだったものが、ようやく整理されてきて、一歩踏み出せば前進できる状態にまでなったのですが、またそこで停滞するようになりました。

そんな時に両親に紹介されたのが、自らも不登校経験があるというカウンセラーでした。カウンセラーといわれる人とは、以前にも会ったことがありましたが、以前は自分自身が混乱していて、心の中では「イヤだ、会ってもしょうがない」と思いながら会っていました。しかし、今回は自分の心も整理され、相手を強く拒否する感情はありませんでした。

最初に会った時、私は自分の悩みについて具体的に話さなかったのですが、自分が考えていたことを見透かしているかのように会話を進めるカウンセラーに驚きました。

 

 

 

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