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その下に六人ずつの船手同心がいるんです。とすると、これで三十五人。その同心の下に、各五十人の水夫がおります。これを計算しますと四百人になります。いくらなんでも徳川幕府の水軍が、四百人ということはないだろうと思うんです。そこでもう一回詳しく調べましたら、伊勢海賊出身の向井正綱という人が船手頭の中で一番偉いんですが、この人だけが八十四人の水夫を持っています。しかし、それを足してようやく四百人ちょっとです。まだあるだろうと思って調べたら、大阪にありました。大阪は六十人で、これは水夫も全部入れた数です。そうすると、徳川幕府の水軍というのは、全国でわずか五百人なんです。四面環海のこの国の将軍が五百人の水軍、海軍しか持っていないというのは信じられないです。これでは、ペリーの率いる四隻の黒船がやって来て、たった四隻の蒸気船で夜も眠れないというのは当たり前のことです。この国防意識のなさは呆れざるを得ないです。私はこれを調べて、徳川幕府が滅んだのは当たり前だと思いました。自分の目が信じられなかったです。

それから、幕府は全国各地に天領というのを持っていますから、結構年貢米があるはずです。年貢米を運ぶのに、この五百人でどうしたのか。じつはこの人たちは何もしないで、民間の廻船問屋を賃雇いで雇って運ばせました。それが朱の丸御用船です。偉そうな丸がついて、ご城米を運んでおりますという、それを威張れたというだけのことなんです。

 

 

 

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