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つまり自由貿易の存するところに海賊がいないというのは、海の原則です。要するに松浦党は自由貿易のなかった中国のほうに向かいます。この中国はちょうど元を倒して明の朱元璋が明国を建てた時ですから、対日政策を最初から間違ったんです。まず朝貢貿易といって、十年に一回の貿易を許しました。ところが、こういうことをしますと、ああいう国ですから、一部の官僚と豪商が結託して、自分たちだけで利をむさぼるというのは、もう分かっておるわけです。浙江省、福建省の中国人は自分たちは放って置かれて、もう我慢がならないと言うほど冷遇された。ご存じの方が多いと思いますが、福建省っていうのは、松浦党の住んでいる肥前の西海岸と全く変わりません。山ばっかりで耕地がありませんから、ここの中国人も海に出ていくよりほかはない。しかし、海禁政策で海に出たら罰せられます。

結局、松浦党が中国に行き、中国人の反乱軍の援助部隊になって大成功しました。松浦党と言いますけど、実際は日本人は二割もしくは多くて三割、あとのほとんどが中国人だったと言われています。もちろん、朝鮮人や琉球人も中にはいました。それで、中国の海禁政策に不満な群衆の心を、この松浦党がしっかりつかんだんです。松浦党には人心を集めただけの理由があります。松浦党は、現代でも珍しいぐらいの民主的な集団です。松浦党契諾状という盟約書が残っておりますが、その盟約書の第一条に、「中央権力を信用せずにすべて我らの談合によってものを決め、中央権力の命令よりも談合を優先する」とはっきり言っています。

 

 

 

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