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松浦党の人間が瀬戸内海を回って非常に面白いのは、そっくりな姓名が幾らもいるということなんです。愛媛県を回ると白石さんなんて、ざらにいます。旧知事も白石さんです。私が名刺を渡したら、「おお、親戚か」と言ってくれた人がいます。つまり、壱岐の白石と瀬戸内海の白石は姻戚関係で繋がっているんです。だから、当時の廻船とか船は、我々が想像しているようなものじゃなく、本当に広域に往き交って手を結んでいます。表向きには、村上海賊と松浦党は敵対関係にあるんです。例えば、村上海賊衆は大名に雇われていますから、堺あたりの御朱印船が帰って来た時は、村上海賊衆に頼んで平戸まで警固船を出します。だから、自分のことを海賊衆とは呼ばずに、警固衆と呼んでいます。帰って来た船を警固して、平戸から玄界灘を渡って瀬戸内へ入って来る。村上海賊と松浦党は対立関係にあって、いつも喧嘩しとったと言われますが、私はそんなことはないと思います。島々に行ってみれば、とにかく松浦という姓はごろごろいますし、白石という姓もいます。私のなじみの姓が、愛媛県一帯に非常に多いんです。恐らく表立っては守る者と襲う者との立場を一応表明しておったんでしょうけれども、実際は大変仲のいい関係だったと見ています。

 

 

 

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