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周囲四百メートルの本拠地能島は、もっと酷いです。能島を取り巻いている瀬戸を船折り瀬戸と呼んでいるんですが、潮で船が折れるというんです。つまり、三重に潮が渦巻きます。鯛崎島という島が横にあって橋をかけて出城を作っていますが、ここにも別の潮が流れています。船折り瀬戸というのは、三重に渦巻いていますから、渡るにも渡れないです。そういう防禦に適した所に本拠地を作ったんだろうと思います。

そういうことで、村上海賊の生態は理解していただけたと思います。この海賊はマラッカ海賊とは違って、完全に職業海賊です。そして、この職業海賊も結局は天下統一によって消えていく、そういう運命にあったということです。

ただし、一つだけ言っておきたいのは、海賊というイメージを、ちょっと考え直さなければいかんということです。戦争中がそうでしたが、海軍というのは大変なインテリが多かった。陸軍に悪いですけど、何となく陸軍に比べて恰好はいいし、海軍というのはやっぱり国際情勢に長けていますから、自然と知識が増えていくんです。この村上海賊というのは大変勉強家が多くて、中国辺りから随分書物を輸入して、文化的に日本に貢献していたんです。

 

 

 

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