海賊の本拠地はそういう小さな島を中心にしています。
これは来島も同じです。次は私が来島に初めて行った時の話です。瀬戸内海の土地勘がないですから、どうやって行こうかと思って、四国観光案内所に電話をして、「来島という島に行きたいんですが、どう行けばいいんでしょうか」と尋ねたところ、「来島?。そんな島ないですがね」との答えが返ってきました。それで、「いや、高縄半島ってのがあるでしょう。あそこのすぐ近くですよ」と言ったら、「ありました、ありました。これはもう船なんか行きません。行きたいんなら、漁師船を雇って行って下さい」ということでした。覚悟して行ってみたら、何のことはない。波止浜から往復運賃百二十円の定期船が出ていました。取材っていうのは、そんなものなんです。観光案内所をあんまり信じていくと、とんでもないことがあります。
私は来島に渡って、これは島じゃなくて戦艦だなと感じました。狂い潮の島というぐらいですから、とにかく潮が凄いんです。ごうごうと音を立てて渦を巻いていました。これでは、ここに籠もられたら普通の船は陸上から攻めてこれません。海賊はこういう島に城を建てる必要があったんだということが、よく分かります。