積み荷の十分の一だと高いと思うけれども、これは出さざるを得ません。交渉してもだめなので、結局は積み荷の一割を出すという証文を出します。そして、実際にその一割を出した時に、マルガミモン(丸字の中に上の字を入れた紋)という紋のついた幟をくれるんです。この幟は因島の水軍城にありますので、ご覧になれば面白いです。その幟を立てて通れば、どの海賊も寄って来ない。要するに、幟が通行証なんですが、その通行証がめちゃくちゃ高かったということです。帰りは荷物を積んでない限り、そうは取らなかったと思うんです。もし帰りに積み荷が多ければ、また取られたでしょうから、往復二割の積み荷を取られたということです。
この武吉という人の凄いところは、これを関所法度というような、まるで天下の法律みたいな名前をつけて、全国の廻船、大名に周知徹底させてしまったということです。みんなよく言うことを聞いたもんだと思うんですが、これは聞かざるを得なかったんです。そして、武吉のほうも実力をつけなければいけませんから、兵農分離を行いました。つまり、島々の中に、ここは漁師が住む島、ここは侍が住む島、ここはまた別の仕事をする造船業の島とか、島々を振り分けました。特に自分の本拠地の能島の近所に越智大島という島と、その横に塩で有名な伯方島という島がありますが、この両方の島に軍隊を配置しました。