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そういう組織がしっかりできましてから、能島の村上武吉という人が、その当時、村上海賊の心の拠り所でありました大三島神社に参詣して「覚え書」をしたためています。面白い文章ですのでご紹介します。「我々は今まで随分人も殺めてきたし、人の荷物を取ったりして悪いことをしてきた。これでは我々は後生が良くないだろうと思う。ついては、こういうことを一切止めたい」と、そこまではいいんです。「ただ、止めては食っていけないから、止める代りに海賊連判状という廻船法度を作り、それによって通行税を取り立てることにした」と、そういう文面です。これを世間に周知徹底させることで、人を殺さずにお金を取る方法を考えたということなんです。要するに、これも海賊ですね。同じじゃないかと言えば同じなんですけれど、実際に実行しました。これが実行できたということは、やっぱり日本がまだ天下統一の過程にあったからです。各大名が陸上でばらばらに戦っていたので、海まで見る暇がなかったんです。それで、この「海賊連判状」によって、瀬戸内海は実際そのとおりになります。

ただ、その取り上げる通行税は、積み荷の一割であったから高いんです。千石の米を積んできたら百石です。それをどういう取り方をするかといいますと、非常に巧妙です。まず、関門海峡のほうは博多や周防大島の辺りに事務所を設け、通る船はこの事務所に行って、「つきましては瀬戸内海を通らせていただきますので、お幾らお納めしたらよろしいでしょうか」と言うと、「積み荷を見せろ」と目録を見ます。

 

 

 

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