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この海賊衆がもう一つ強力な大名の支配下に入って、その御船手組織になった時に初めて水軍となります。そして、その一つの強力な大名が、もっと強力な秀吉や家康というような国家の中に組み込まれた時、これは海軍になるんです。ですから、海賊と海軍の区別というのは、いかに組織化されているかというだけなんです。だから、大海軍とか言いますけれども、大海賊衆と言ってもおかしくないです。

今日、ここに出て来る時に、私の講演タイトルを見ましたら、「世界の海賊と現代海賊」というタイトルになっておりましたので、ちょっとこれでは困ると申し上げました。世界の海賊となったら、イギリスがいい例で、イギリスは海賊国家と言われています。イギリス海軍では、スペインの無敵艦隊を十六世紀に撃滅した有名な海賊の、フランシス・ドレイクが艦隊司令長官です。そして、オランダにしても、ポルトガル、スペインにしても、公海上で出会う商船のすべてが大砲を備えています。これはヨーロッパ系商船の特徴です。これがアラビア系になりますと、こんなことはありません。ですから、出会うと必ず戦争をして、勝ったほうが負けたほうの積み荷を全部奪う。これが当然のことでしたから、この当時は海軍と海賊の区別がないんです。ドレイクなんていう船長は、スペイン船を見かけては物を奪って帰り、それで勲章をいっぱいもらったということですから、この十六世紀のイギリス、オランダ、フランス、スペインについては、これは海賊国家と言っても全然おかしくないでしょう。

 

 

 

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