ここで、ちょっとマラッカ海峡の話をいたします。マラッカ海峡というのは、ご存じのように、マレー半島とスマトラ島の間の細長い、千キロぐらいの非常に狭い海峡です。この狭さという点では、恐らく瀬戸内海とあまり変わらないんじゃないかと思うぐらい狭いです。
今、日本の船舶が被害を受けて問題になっておりますのは、マレー半島の南端のシンガポール海峡という所です。このシンガポール海峡は、航路はわずか五キロメートルしかないんです。海峡の幅は九キロメートルありますが、海峡の幅があっても、こういう狭い所は潮流が激しいですから、船が安全に通れる水路というのは、そんなに広くありません。水路は多分、五キロメートルだと言われています。こうなると、瀬戸内海の最も狭い芸予諸島、いわゆる村上海賊衆の本拠地と全く変わらないんです。こういう五キロメートルの水路の中で、暗礁や複雑な海流を避けて通れる所はわずか八百メートルしかないらしいです。これも瀬戸内海とそっくりです。つまり、狭い海峡の水路には島がたくさんあって、どこからでも出てこれるんです。襲われるほうとしては、どこから出てくるか全然見当がつかない島が多いんで、たまったものじゃありません。