7. 波の当たらない海食崖
屏風ヶ浦
全長10kmほどの海食崖が続く屏風ヶ浦の海岸線は、東洋のドーバーとも呼ばれる独特の景観で有名です。ボロボロの非常に脆い泥岩で形成されるこの崖は、太古の昔から九十九里浜に砂を供給し続けて来ました。かつては年間1m弱の速度で後退を続けてきたこの崖も、消波堤の設置によって現在は後退が抑えられています。崖の上では畑や公共施設などの土地利用がされており、国土保全を優先すべきか、自然環境を優先すべきかについて考えさせられる場所です。
【清野】 ここが東洋のドーバーと言われている屏風ケ浦です。ここの崖面では地層をはっきりと見ることができます。下の層は海底に堆積した泥がゆっくりと固まった泥岩で、その上には火山灰があります。火山灰というのは、地質の上で謎を解くカギになります。この屏風ケ浦でも、箱根火山や、九州の阿蘇や桜島が大爆発したときの火山灰などが含まれていて、広いエリアに分布しているので、その成分などを分析すると時代測定が正確にできます。
【宇多】 ドーバー海峡にあるここと同じようなチョーククリフという崖は、海食崖対策などは何もやっていませんので、外国の海食崖というのは日本とは大分違います。この近くにはかつて通連洞(つうれんどう)というトンネル状の有名な海食洞がありました。これは波で侵食されてできた地形ですが、その後自然の波の作用で侵食が進み、今は何も残っていません。