ライフセーバーの視点から見た九十九里浜
九十九里ライフセービングクラブ代表の田代宗司さん
1994年から開始した我々のライフセービング活動も今年で8年目を迎えますが、現在は野栄町から九十九里町までの6町村、16海水浴場の監視をメインに315名が活動しています。通常、ライフセーバーというのは夏だけの活動と思われがちですが、これは7〜8月の海水浴シーズンに、地元自治体から海水浴場の監視業務委託を受けて行っているもので、我々はこれ以外にも年間を通してビーチクリーンやボランティアでの監視救助活動も行っています。
ライフセーバーは、安全のために荒天時には海水浴場の遊泳禁止措置などを行いますが、このような場合、海の家などからクレームが出るのも事実です。営利と安全という、どちらも重要な要素だけに難しい選択ではあるのですが、やはり、こうした問題の解決にはライフセービング活動に対する地元の理解という部分が必要になってきます。我々が年間を通して活動する理由は、常に地元に貢献することで信頼関係を築きながら、地道に活動の理解を得ることが大事であると考えているからです。
夏季の海水浴シーズンだけで200回以上の救助件数がありますが、少なくとも我々が管轄するエリアで活動時間内の死亡事故は過去3年ゼロと、重大事故は確実に減少しているのは事実です。また夏季以外にも沖へ流されたサーファーの救助などで、年間を通した活動をしています。
砂浜の侵食に関しては定量的なデータはありませんが、海水浴場によっては、年々砂浜の奥行きが狭まっているのも事実ですし、また我々の管轄だった野栄町の野手浜海水浴場は、砂浜がなくなって今年から閉鎖されましたから、やはり侵食は進んでいると思います。
ライフセーバーの立場から見れば、砂浜の侵食そのものは遊泳者の安全にはそれほど関係ないのですが、むしろ侵食対策で作られた突堤(ヘッドランド)の横に強い離岸流が発生するということが問題だと思います。それと沖に消波ブロックを積み上げて作った離岸堤の周辺も危険です。このように海水浴場の砂浜を保持するために人工構造物を造るのは、砂浜を維持するという目的には効果があるかもしれませんが、海水浴場としての安全性を考えると必ずしも適策とは言えない気がします。
余談ですが、構造物がなくても離岸流の発生しやすい場所はあって、地元の人に「海岸に鳥居が立っているような所は地元では澪口(みおぐち)と呼ばれる離岸流の発生しやすい場所で、昔から水難事故が多かったという言い伝えが多い」という話を聞いたことがありますので、注意すべきかもしれません。
いずれにせよ、ライフセーバーに対する一般的認識は、まだ単なる監視員という認識がほとんどです。特に自治体から委託される海水浴場の監視業務は入札によって業者選定される仕組みになっていますから、私の希望としては自治体に「海水浴場の安全のためにはライフセーバーの監視がどうしても必要だ」という認識を持ってもらうためにも、地元から信頼されるレベルの高い監視救助活動を今後も続け、ライフセーバーの地位の確立を図っていきたいと考えています。