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【質問】 では、このまま放っておけば、さっき行った自然豊かな堀川海岸もいずれ侵食されてしまうのですか?

 

【宇多】 必ずしもそういうわけではありません。今日一番最初にお話した、侵食のメカニズムについて思い出して見て下さい。九十九里浜の地図をひっくり返して見ると良くわかります。九十九里浜というのは南北一直線に伸びていると思われがちですが、実際はお椀状になっています。海岸の侵食というのはお椀の縁のところが最も激しくて、底に近い場所というのは割に安定しているものなんです。

 

今日、これから行く飯岡や屏風ヶ浦というのはお椀の縁に位置しています。実際には1964年(昭和39年)頃から侵食が激しくなり始めて、徐々に波及していきました。でも、底へ近づくにつれて波及スピードと影響量はだんだん小さくなって来ます。そういう意味では、堀川海岸から片貝付近というのはお椀の底に位置していますから、侵食というのは実はそれほど深刻ではありません。

今 、私たちが立っている場所というのは、屏風ヶ浦の一部が削られ、その土砂が流れ着いてできた土地です。護岸工事によって屏風ヶ浦の侵食がほぼとまった現在、絶対的な砂の供給量が不足していますから、お椀の縁から侵食が始まって、今、ここまで伝わって来たということです。

 

ここで消波ブロックについてちょっと説明しましょう。消波ブロックというのは様々なサイズのものがありますが、全部相似形で作られます。ここのものだと7〜8トンぐらいの重量ですね。これを積み重ねると内部に空隙ができ、これが波のエネルギーを消します。だいたい1トン当たり2万円程度のお金が工事費込みで投入されます。

 

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次から次へと新しく積まれた消波ブロック

 

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ヘッドランドの先端から野手海岸の消波ブロックを眺む。波が砕ける際に発生する波飛沫が見える。(2001年11月)

 

 

 

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