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【質問】 ある貝がうんと増えるから獲り過ぎて絶滅し、また次に別の種類の貝が増えるという現象は、気候などとは関係なく、特定の種類の貝がいなくなったから、別の種がワッと繁殖するということですか?

 

【平本】 基本的に栄枯盛衰があるのだと思います。面白いのは、獲り過ぎていなくなっただけでなくて、全部浜に打ち上がったりして全滅するのです。だから、獲れなくなったのは乱獲という理由だけではありません。よく貝は湧くって言いますが、本当に湧くものなんだなと思います。今、九十九里の南部や北部では輪番制など、1日の漁獲量を制限することをキチンとやっていますが、九十九里中央部はその辺がまだうまくいってないようです。

 

【清野】 そろそろこの砂丘をあとにしますが、こうした砂丘地でよく見られる草に、コウボウムギというものがあります。弘法大師の「弘法」です。果たして弘法大師がこの穂みたいなバサバサの筆で書いていたかどうかはわかりませんが、いずれにせよ、こんな語源を持つ植物です。これが砂丘の前面のところに生えていまして、砂をかぶってもまたそこの中から芽を出して来ます。重要なのは、こういう植生が無いと砂が風で飛ばされて飛砂の問題などが起きるのです。植物が生えて根を張ることによって、砂浜が安定化するという機能があります。このコウボウムギも引き抜いてみるとわかりますが、横に網目状に根を張っていまして、砂にネットをかぶせるような形になって、これによって砂をとめる効果があるわけです。ですから、こうした植生を車などが踏み荒らして枯らした場合は、生態系保護という観点以外の面でもデメリットが大きいと言えます。

 

【宇多】 砂丘のすぐ裏側には、広く帯状に松林の保安林が広がっていますが、昔はもっと内陸側にありました。一見、昔からここに保安林があるように錯覚してしまいますが、保安林がどんどん海側へ前進してきています。我々が今見ている姿というのは、ずっと昔からあると勘違いされてしまうことが多いんですが、そうではありません。先ほどここは九十九里浜の原風景に近い場所だと言いましたが、実際はこれでも相当人間の力で変えられてしまっているのが事実です。

 

【清野】 それでは移動しましょう。九十九里浜の原風景を見たあとは、最近の風景とでも言うんでしょうか、砂浜の全く無い九十九里浜へ向かいます。

 

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砂丘地の海浜植物は長い根を張って砂丘を安定化させる役割をもつ

 

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コウボウムギ

 

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ホッキガイ(上)とサトウガイ(下)

 

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サンドダラー(カシパン)

 

コウボウムギ(弘法麦)

カヤツリグサ科 スゲ属

海岸に生える多年草で長い地下茎を伸ばす。麦とは全く関係なく、単に穂の形が麦に似ているというだけである。弘法の名は、穂が筆のような形だからという理由ではなく、地下茎の節にある葉鞘(ようしょう)の繊維を、昔は筆に用いたことに由来する。

 

サトウガイ

二枚貝網 ウグイスガイ目 フネガイ科

本州沿岸に生息するアカガイとよく似た二枚貝で、殻表の肋が38本前後という特徴がある。近縁種であるアカガイは42本ほどで、サルボウは32本ほど。刺身、寿司ダネとされる。

 

ホッキガイ

二枚貝綱 マルスダレガイ目 バカガイ科

ホッキガイは通称で正しくはウバガイ。殻長は10cmほどで寿命は30年近くと長寿。太平洋側では九十九里以北、日本海側では富山以北から北海道までの寒い海の沿岸に生息する。刺身、寿司ダネとしても人気が高い。

 

 

 

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