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【清野】 これは英語ではサンドダラーと呼ばれている、白くて平べったいウニの仲間です。和名ではカシパンと言います。実は明治時代に、近代生物学が始まった頃、全国統一名をつけ始めた時は名前のつけ放題で、カシパンとかタコノマクラだとか、不思議な名前をたくさんつけました。今、工学部の先生と一緒に生物の体を色々観察していますが、このカシパンの中を割ると中身がないような感じですが、ハニカム構造みたいになっていまして、上から押されても割れないような構造になっています。下に口穴があいていますが、砂の中に埋まっていて、そこから口を出して砂の中に住んでいる生き物を食べています。実際これは、生きているときもこうしたペチャンコな形ですので、ウニの仲間といってもほとんど実がありません。カリフォルニアに行くと、これにピンクだとか黄色とかのラッカーを塗ってペンダントにしています。

 

【質問】 この貝はなんという貝ですか?

 

【清野】 これは多分サトウガイという貝です。アカガイとは非常によく似ていますが違う貝です。この貝殻の縦縞の本数が38本だとサトウガイで、四十何本だとアカガイで、何本だとサルボウといった具合で、形としては同じです。だから、飲み屋さんに行ったときに、アカガイといってサトウガイが出て来ることもあるのでよく注意して観察して見て下さい。(笑)

 

ここにホッキガイが落ちています。英語でサーフクラム(Surf Clam)と言います。サーフィンのサーフと同じで、波が砕けるところにいるアサリという意味です。ホッキガイはもともと、北の、どちらかというと北方性の貝ですが、この九十九里でも獲れます。昔の貝塚からこのホッキガイの仲間が出て来ると、当時の気候が寒かったとかいうことが想像できるわけです。

 

【平本】 九十九里がホッキガイの生息地の南限です。九十九里のホッキガイというのは、銚子市に名洗港という港がありますが、以前この港を浚渫したら、副産物でホッキガイがものすごく獲れるようになったんです。しかし結局は獲り尽くしてしまいました。そうしたら、今度は1975年(昭和50年)より少し前ですか、いわゆるサトウガイが九十九里浜一帯でものすごく獲れるようになったのです。ところが、このサトウガイはアカガイの仲間の中で一番値段が安いんですね。だから、買い叩かれて乱獲の挙句に、大量打ち上げがあって絶滅してしまいました。もう20年ぐらい前でしょうか。

 

今ではそれに代わって、九十九里の中央部ではチョウセンハマグリがメインです。海底に泥の多い南側と北側ではダンベイキサゴ、この辺りではナガラミと呼んでいますが、この巻貝が中心でした。しかし最近はそれも減って来ています。特に南部の一宮海岸ではヘッドランドを造って砂浜を確保していますが、あそこはヘッドランドを造らずに放っておいては駄目になるでしょうが、造ったからどのようになるのかというのは、これからの焦点だろうと思います。

 

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砂丘地に群生する海浜植物

 

 

 

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