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このように、昔から日本では河口を漁港として利用して来たこともあって、長い間浚渫工事が行われてきました。しかし浚渫は船にとっては必要なことなのですが、反面、生態系の方からして見ればかなりのインパクトがあるはずです。ただ、それについての実証的な研究が無いので、結果的に今までの日本では生態系のことを考えずに、航路のことだけを考えた管理になって来たと思います。

河口の姿を見ていただくとわかると思いますが、外洋から入って来た波のエネルギーを河口のところでとめているのは、この砂州なんですね。皆さんは、サケやアユ、ウナギなどの海から川に遡上する魚たちが体を川に慣らすとか、川から海に戻るときに体を海に慣らすとか、つまり河口の汽水域で、海と川の塩分に対応できるように体を休めている、といった話を聞いたことがあるかと思います。しかし、このように浚渫工事で砂州をどんどん採ってしまうと、外洋の波浪がそのまま川の中に入って来てしまって、汽水域で波の静かな場所というのが無くなってしまいます。今後、船が大事か、それとも魚や鳥が大事か、生態系までも含んだ河口砂州の管理のあり方ということについては、まだまだ十分検討する余地があると思います。

 

汽水域

海水と淡水が入り混じる、塩分濃度の薄い海水域のこと。

 

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航路浚渫の工事看板

 

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栗山川河口での浚渫作業

 

 

 

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