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【宇多】 栗山川の河口には、川の流れと平行にコンクリートの導流堤が3本あります。本来ならば河口導流堤というのは2本でいいのですが、この場所では2本だと砂がどんどん溜まってしまって船の出入りができなくなってしまうのです。それで河口の真ん中にもう1本導流堤を造って川幅をわざと狭めてやることで川の流速を速め、その力でもって砂を流し出すという発想で設計してあります。

 

しかし、それでも自然の力の方が勝っていますから1年もしないうちにどんどん砂は堆積してしまい、結局、航路維持のための浚渫(しゅんせつ)をやらざるを得なくなります。ちなみに前方に白波が立っていますが、通常、波の高さの約1.5〜2倍が水深ですから、今日のように波静かな条件では白波の立つ付近の水深はせいぜい数十cmです。ですから船の喫水分の水深すら確保できないという状況がよくわかると思います。ちなみに川の中に溜まっている砂は、この川が上流から運んできたものではありません。全て浜から風に乗って飛んできた飛砂か、河口から波とともに入ってきた漂砂です。栗山川には砂を運ぶほどのエネルギーはありません。

 

この工事看板は、この港を管理している水産庁所管の千葉県銚子漁港事務所が、栗山川漁港の航路維持浚渫の目的で行っているということを示しています。こういう看板は公共工事の場合は必ずあって、誰がどのような目的で工事をしているのか分かるようになっています。

 

この辺りでは北から南へと砂が流れていますから、浚渫した砂はサンドバイパスさせて河口の南側の海へ流してしまう手もあります。砂の流れのメカニズムからすれば自然な形ではありますが、工事そのものは継続してやる必要がありますから、いつまでやったって仕事がなくならないわけで、嫌味っぽく言えばいい商売かもしれません。ですから財務省にして見れば、維持浚渫にかかる費用というのはお金を出したくない、となるわけです。公共事業としての扱いはしないというのはそういうところに理由があります。

 

【清野】 航路維持浚渫というのは地元の負担金が非常に多いんです。ですから地元の自治体にしてみれば砂浜があるということは、「砂と闘うために、町の年間予算のかなりの部分を取られてしまうので、非常に困っている」というのも事実です。地元にお金を落とすのだからいいのではないかと思いがちですが、必ずしもそうではないのです。

 

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栗山川河口の3本の導流堤のうち、右側半分は砂に埋もれてしまっている。

 

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導流堤の先端より公園、栗山川河口を眺む。(2001年11月)

 

 

 

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