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時間がさらに経過すると、残された自然の砂浜はごくわずかになり、現在の九十九里浜の姿へとなって行きます。しかし一方で見方を変えれば、今日巡検で見る風景のうち、まだ砂浜が広い場所は20〜40年前と変わらない砂浜の風景を見ていることになります。もちろん個々の植物や動物は異なっているかも知れませんが、全体としてみた風景は同じものになるはずです。なぜなら海浜の幅や勾配が同一であるということは、波の作用も長期的に見ればほぼ同一なので、バームの高さや植物の繁茂限界もほぼ同一であると考えられるからです。

 

つまり図2の海岸の変遷を時の流れとして認識すれば、九十九里浜の将来をも予見しているとも言えます。何らの対応をおこなわず、右向きに沿岸漂砂が抜け出て行くという条件のままであれば、今日見た風景で広い砂浜があった場所も、やがて砂浜が無くなってしまうことは明白です。

九十九里浜は北端の屏風ヶ浦の海食崖(かいしょくがい)と、南端の太東崎の海食崖の間に挟まれた砂浜で、全体に「お椀」のような形状を有しています。地図を横にしてみると良くわかると思います。 このようなお椀状の海岸線付近で砂の動きを引き起こしている潮流は、いわゆる黒潮などの「海流」ではありません。この流れは沖合から海岸線付近へと近づいた波が、海岸線付近で砕ける際に生じる流れ(海浜流)です。海浜流は汀線(ていせん)に沿って沿岸方向に流れ、最終的にこの沿岸流は離岸流となって全体に図3に示すように循環流を形作っています。

 

単純に波の来る方向がお椀の底と直角の場合、お椀の底のA点より右側のB点に立つと、波が右側から打ち寄せてきますので左向きの沿岸流が生じます。同様にA点の左側のC点では波が左側から入射するために右向きの沿岸流が生じます。この沿岸流によって砂は緩やかに移動しているのです。

 

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図3 九十九里浜全体で見た流れ(海浜流)の模式図

A点では沖から直角に打ち寄せる波も、B点から見れば斜め右方向から波が打ち寄せることになる(B点を真下に来るように図を時計回りに回転させるとわかりやすい)。反対にC点では左方向からの波となる。このように海岸線と波との相対角度に依存して波のエネルギーは沿岸流を作るエネルギーへと変わる。九十九里浜のようなお椀状の海岸線ではこれがさらに大きな循環流へと発達する。

 

 

 

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