皆さんは「今日どんなに一生懸命海岸を見ても昔の海岸の姿はわからないし、ましてや昔の状態を復元するのは難しい。また同様に将来の姿を予見することも難しい。」と思われるかもしれません。しかし実際はそうではありません。図2の模式図を見てください。この模式図は例として40年前、20年前、および現在の海岸線状況と、各時期の海浜の状況を模式的に示しています。40年の昔、九十九里浜は海岸線のどこも広い砂浜で覆われていました。九十九里浜の原風景です。緩やかな勾配の海岸が広がり、沖合から来る波は4段、5段と繰り返して崩れていたであろうし、浜には人工構造物などなくハマヒルガオなどの海浜植物が生え、そこには夏になるとコアジサシが産卵に来るような風景であったはずです。
しかし20年ほど前になると左側の漂砂の上手側からの砂の供給量が減少し、それまでなだらかだった砂浜は勾配が増加して急深となり、砂浜幅が減少してしまったため陸を守るための護岸や消波ブロックが設置され始めます。砂浜の侵食という現象は漂砂の上手側から下手側へと順に発生しますので、この段階では図の左側ではどんなに侵食が激しくとも、中央から右側の砂浜幅の広い区域ではそれとは無関係に昔どおりの風景が続きます。