「では、さきをいそぎますので、これで」
何百というサケたちは、大きなからだをクルリとかいてんさせて、しゅっぱつしました。
サケたちが行ってしまったあと、つぎつぎに赤いランプがついて、エビのおじょうさんたちは電話をつなぐのに大いそがしでしたが、チョウチンアンコウの局長さんは、ずっと考えこんでいました。
「だれか、日本語をしゃべれたら…日本人にきけんをしらせることができるのだがね…」
局長さんは、あたまをしぼって考えに考えたすえ、「そうだ!」とむなびれでパチンとからだをたたきました。
「あのかたに、おねがいするしかない」
局長さんはそういうなり、頭のうえのチョウチンを五回、光らせては、消しました。
「局長さん、ごようでしょうか?」
あらわれたのは、頭にきれいな赤いかんむりをのせたリュウグウノツカイでした。
「大いそぎでオトヒメサマに、オオウミガメをよこすようにおねがいしたいのだがね」
「局長さん、おことばですが、オオウミガメはたいへんお年をめしています。オトヒメサマが、おゆるしになるかどうか…」
リュウグウノツカイは、きのどくそうにいいました。
「ウラシマタロウのしそんのくらす日本に、きけんがせまっているのでね。日本語のできるオオウミガメに、ここから電話をかけてほしいのさ」
局長さんの、とてもしんけんなかおをしばらくじっと見つめていたリュウグウノツカイは、とうとう、わかりました、と頭をさげました。
やがて、リュウグウノツカイにからだをささえられながら、オオウミガメがやってきました。
「局長さん、この年よりに、まだ、お役にたてることが、あったかね」