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「ヨッパラッタだけ?」

アジのぼうやはぴょんとはねおきると、はじめてキュウキュウとこえをあげてわらいました。

そこへ、何百というサケたちがやってきて、ぐるりと電話局をかこみました。

「チョウチンアンコウの局長さん、おげんきそうでなによりです。ちょっと、おしらせしたいことがあってよってみました」

「これは、これはサケのみなさんじゃないか。よくおいでなさった。そろそろ、うまれた川へもどるころだとおもっていたがね」

「そうなんです。川から海へきて四年。ふるさとの川へもどる…これがぼくらのさいごの旅です」

「おわかれができて、うれしいねえ。いのちがけのたいへんな旅だけれど、元気のいい子がうまれるように、いのっているよ」

局長さんは、めずらしくしんみりとそういうと、はなをすすりました。

うなずきながら、サケがいいました。

「局長さんは、近ごろ海の温度があがって、氷山がとけだしているのをごぞんじですね」

「もちろん、人間のせいだがね」

「ところが、そうとばかりはいえないんです」

「はて、それは初耳(はつみみ)だね」

局長さんは、くびをかしげました。

「海底火山が、あちらこちらでふん火をはじめようとしています。太平洋の日本の近くの海底が近々(ちかぢか)あぶない。クモヒトデをはじめ、みんなひっこしをはじめています」

「近々…日本…」

局長さんは、サケのいったことばをくりかえして、ブルッとみぶるいしました。

「そりゃたいへん。日本の山をおおう森ときれいな川の水は、あんたたちサケにとっても、この海にとってもなくてはならないものだ。すぐ、できるかぎりのことをやってみるさ」

 

 

 

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