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「ヤレヤレ、またケンカかい?

まったく、人間は海から生まれながら、いつまでたっても、ちっとも進化しないねえ。ほんとうに、こまったものだよ。

さあアジのぼうや、いいもの見せてあげよう」

局長さんは、そういうとあたまのうえのチョウチンを一回、二回、三回光らせて消しました。

「ごようでしょうか、局長さん」

どこから、やってきたのでしょう。せの高さが三メートルはありそうな、大きなダイオウイカと、はずかしそうなようすのクラゲの姉妹が、ふんわり局長さんの前にまいおりました。

「すまないけど、いつもの『ケンカの子守歌』をやっとくれ」

局長さんがそういうと、ダイオウイカはシュウッとうでをのばして、電話線をにぎりました。そして、にぎった電話線を、なわとびのようにゆらゆらとゆすりはじめました。するとクラゲの姉妹が、ぽうっと光りだし、ふわりふわりとゆうがに電話線をとびこえながら、うたいだしました。

さあさあぼうや、なみだをふいて

けんかはおしまい、おやすみなさい

あした、おめめがさめたなら

ゴメンといえた、キミがかち

やさしいうたごえが、海のそこにひびきます。アジのぼうやは、うっとりして、クラゲのうたう子守歌にききいりました。

電話線のむこうでは、ふしぎなことがおこっていました。ブイブイ王国のブイーノ二十六世の耳にきこえるナイナイ大統領のこえが、大きくなったり小さくなったりしながら、しだいにとおく、ききとりにくくなってきました。電話には、ウオーンウオーンという低い音がうねり、ブイーノ二十六世は、その音をきいているうち、あくびがでてしょうがなくなりました。

「ブイブーイ、であるからしてー、だんだんねむくなってきたのであーるからしてー、ひとねむりしてからー、また、でんわすーる」

 

 

 

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