アジのぼうやは、いまにもなみだがこぼれそうな大きな目を局長さんにむけました。
「局長さん、みんなが死にかけているんだって、ぼく、どうしたらいいんだろ」
「シーッ」
局長さんは、むなびれでアジのぼうやの口をふさぎました。
「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」
とつぜん、いままできいたこともない、ぶきみで、いじのわるそうなわらいごえが、電話線からきこえてきました。
「これは、これはブイーノ二十六世陛下、ごきげんよう。なんですか、船がブイブイ島でしずんで、魚にひがいがでたと…それはそれは、たいへんなことでした。しかしですな。その船は、ナイナイ共和国の船ではありませんぞ。したがって、わたしには、まったくかんけいナイナイ」
「ブイブイ、なにをいっておーる。しずんだ船から助けだされた、のりくみいんが、ナイナイ大統領のひみつのめいれいをうけた船だとしゃべったのだぞ」
「わたしは、そんなめいれい、しらナイナイ」
「なーるほど。そこまでしらないといいはるならば大統領、わたしは、ブイブイ国王として、海をあらされたおかえしをしますぞ。
これ、船の出動じゅんびにかかれー!」
ブイーノ二十六世のわれるようなどなりごえが、電話局をふるわせました。
「ヒャヒャヒャヒャヒャ、船ですと?なんとおろかな。こちらは、すぐにミサイルをブイブイ王国へ発射できるのですぞ」
ナイナイ大統領は、ばかにしたようにいいました。
チョウチンアンコウの局長さんは大きなためいきをつきました。