日本財団 図書館


エビのおじょうさんたちは、口からブクブクあわをはきながらうたいました。

すると、電話線の向こうで女の子がクスッとわらいました。

「ほんとうにごめんね、ようこ」

おとうさんが、すまなさそうにいいました。

「おとうさん、いいのよ。ようこ、がまんする。それより、おとうさん、ブクブクおもしろい音がきこえるわ。ほら…」

「そうかあ?おとうさんにはなにもきこえないけど…電話回線のぐあいのせいかな…そうだ、ようこ。たんじょう日には、プレゼントをおくるからね」

「きっとよ」

「きっと…じゃ、また」

プツンと電話がきれました。電話こうかん台の赤いランプもきえました。

エビのおじょうさんたちは、うたいつかれたので、こしをまげてすわりこみました。

「やれ、やれ、ごくろうさん」

局長さんは、まんぞくそうに大きな口をあけて、にっこりわらうと、むなびれでエビのおじょうさんたちを、あおいでやりました。

そこへ、

「たいへんだー。局長さーん、チョウチンアンコウの局長さーん。たいへんだー」

海のうえのほうから、かんだかいこえをあげながら、だれかがおりてきました。おりてくるというより、ものすごいスピードでおちてくるといったほうがいいでしょう。

「おや、めずらしい。アジのぼうやじゃないか。またよりみちでもして、なかまにはぐれたのかい?」

局長さんは、からかうようにいいました。

「ちがうわーい。それどころじゃないって。いま船が、ブイブイ島の岩場にぶつかっちゃったんだよ。船はしずんで、近くをおよいでいたマンボウやイワシやタイが、みんなプカプカ海のうえにうかんでいるんだ」

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION