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ぼくもいっしょになってさけんでいた。

「おい!タケ、おまえ、シャツぬげ」

「ええっ、なんするん?」

にいちゃんは、ぼくのぬいだシャツを、ふりまわしながらさけびつづけた。

「おーいおっちゃ一ん、このシャツみつけてくれー」

ぼくは、すこしでも高いところがいいかと思って、つみかさねてあるテトラポットをよじのぼった。

「おーい、おーい」

と手をふっていると、船の上にだれかが立ちあがった。

「みつけたらしいな、だれやろ」

「だれでもええ、あの群れは大きいぞ。タケもっとよべ」

「おーい、おーい」

両手をメガホンにして、二人で声をあわせたとき、また一人が立ちあがった。

「あっ、わかった、ヨシキのおっちゃんとおばちゃんや」

ぼくは、立ちあがった人のかっこうでわかった。船はだいぶ近づいてきているらしい。だけどまだまだ声はとどかない。

にいちゃんは、片手にぼくのシャツをつかんだまま、父ちゃんにおしえてもらった手旗信号をやりはじめた。魚の群れを、手旗信号でしらせるつもりや。なんども、なんどもくりかえしている。

ようやく船の上のおじさんが、両手で大きなまるをつくった。おばさんが、なんどもおじぎをして手をふった。

「やったぁ!おれの信号が通じた。みろ!みろ!」

にいちゃんはゆびさしながらとびはねた。

「ほんまや、にいちゃんようやったな」

ぼくは、にいちゃんをみあげた。

船は魚の群れに近づいて、おじさんと、おばさんが網をおろしている。

 

 

 

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