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「おう、もうちょっと、とるぞー」

にいちゃんはこたえた。

ぼくは、砂浜でみつけたひらたい小石で、水きりを飛ばした。一ぉつ、二ぁつ、三ぃつめを飛ばしたとき、

「やったぁ!五そう飛び」

ぼくは、両手をあげてはねあがった。だけど、きょうそうあいては、だあれもおらん。

カモメは、さんばしのはしっこに、胸をふくらませてならんでいる。

「おまえらええなあ、つれあってえ」

ぼくはおもわずつぶやいた。

そのとき、すぐ目の前で大きな魚が数匹、バシャバシャッと動いて砂をまきあげた。水面に波紋が大きくひろがっていった。どうじになにかのかたまりが、葦の根もとへ飛んだ。そいつは、小さい魚でピチピチはねている。

ぼくは、びっくりしてあわてた。こんなのはじめてだ、胸がどっきどっきしている。

ぼくの目の前に、魚が飛びあがってくるなんて、生まれてはじめてのラッキー。

ぼくは、トビハゼを入れていたバケツをひっくりかえして、水をくみあげると葦のしげみへとかけもどった。

息をとめて、一匹をつかむ。

魚は、ぼくの手のなかで、ピクピク体をくねらせてはねた。小さいと思った魚が、いがいに大きかった。

「あっ、この色!金太郎イワシや!」

バケツのなかに入れたら、すいーと泳いだ。

「やったぁ!うわーわー金太郎」

ぼくの胸はおどった。そして数をかぞえるのもわすれて、つぎつぎにつかんではバケツに入れた。バケツのなかの魚は、体と体のあいだに頭をつっこみあって、動けなくなっている。

「ようし、水たしたろ」

 

 

 

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