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正すけは、やたらに“世界一”を入れながら山盛りしゃべった。

オジンはじっと太一たちの話しを聞いていた。

「あのね、海の向こうにね、ぼくの国があるの。そこに、きみたちの言う辰美ニイや勝ニイもいる、かも知れないね。こんど帰ったら、そして、辰美ニイたちに会ったら、きみたちのこと伝えておくよ。約束するよ」

オジンはやっと少しにっこりして言った。

「オジンはなんで月夜にしか浜へこんの?」

太一も正すけもすっかり、ウラタのオジンに気をゆるしていた。親しげなやさしい気持ちになっていた。

「そうね。月が好きだからかな」

「朝日は見んの?海から日が上るとこも見とかんと。月ばっかえこひいきしたらいかんじゃろ?」

「くふっ。そうだね。きみたち、海は好き?」

「すきもきらいも、見えるもんは海ばっかじゃ」

「好きんときもあるし、きらいんときもある。ようわからん」

「海のむこうにね、神様が住んでいるところがあるって聞いたことある?きらきらした光と風に包まれている。人は死ぬとそこへ行く。ご先祖たちもそこにいる。この仮面を作ってくれた友達の方が話すの上手なんだけど……。海のむこうのその国から、しあわせが届くんだって。そして、ふしあわせを送り届けると受け止めてくれるんだ」

オジンは炎に新しいコッパを足しながら言った。

「それ、どうやって送ればいいの?ふしあわせをさ」

 

 

 

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