島をはなれてしばらくいくと、やがて東の空にまっ赤な朝日がのぼってきた。ちぎれ雲をこがすような太陽の花だ。
それからどれくらい走っただろうか。サメをとるはえなわ(ロープに針とえさをつけたしかけ)のブイがういているところでエンジンをとめると、あたりはみわたすかぎり水平線の大海原(おおうなばら)だ。
「ここは正(マサー)とヒロシーのおじいたちがしかけをしているところだ。ほら、そこに一匹かかっているぞ」
父さんが黄色いブイのロープをたぐっていくと、とつぜん、バシャッとしぶきをあげて、黒いサメが船のちかくへよってきた。父さんはなたをふりあげて、サメの頭をうった。まっ赤な血が吹きあがった。サメははげしくあばれた。
父さんはすばやくロープをはなした。たちまちあたりは血だらけの海になった。
「これでいい。やつはずるがしこいからこんなはえなわにはかんたんにはかからん。だが、この血のにおいをかいでやつはかならずここへやってくる。いちど、人間をくったサメは味をしめて、なんどもおそってくる。だから、いま、やつをたたっ殺しておかんと、またいつなかまの漁師がやられるかわからん。やつだけは、どうしてもやっつけないといかんのだ。これはかたきうちなんだ」