サバニは沖縄独特の木造の小型の船で、はばがせまくスマートだが、そのぶん安定性には欠けるところがある。そんな話をしていると、庭のほうからげたのあし音が聞こえてきた。
「こんばんは」
女みたいに長い髪をした大学生のふたりだった。ふたりとも顔はみおぼえがあった。
「おお、神谷(かみや)と屋嘉部(やかぶ)じゃないか、いつ帰ってきたんだ?そうか夏休みか」
「うん、きのう帰ってきたんだ。さっきまでちかくののみ屋で屋嘉部(やかぶ)たちとのんでいたんだけどよう、ヒロシーが造船所でしごとしてるって聞いたんでさ、ちょっとおまえたちに相談(そうだん)したいことがあってきたんだ」
「なんだ、あらたまって相談ってのは?まあいいからあがれや。ひさしぶりじゃないか」
二人は兄(アニー)たちの同窓生だった。髪が長いので女みたいだと思ったけれど、よくみると二人とも顔は日焼けし肩はばがひろく、うではふとかった。神谷(かみや)さんが最初に話をきりだした。ぼくはそばで聞き耳をたてていた。
「おれ、大学でヨット部に入っているんだけどよう、この夏休みにヨットをつくってみようと思っているんだ」