そう、一七七五年に戦争を始めてから、アメリカは初めて軍艦を造ることになった。
それもでかい戦列艦じゃない。フリゲート艦だよ。独立戦争に立ち上がった十三の州が金を出し合って十三隻のフリゲート艦を造ることになったんだ。それで俺の生まれた町でも一隻造ることになった。俺は軍艦造りを手伝って、そのまま海軍に入隊しイギリスと戦う決心をした。なにしろそのときの俺は愛国心に燃える十六歳の若者だった。俺は私掠船を下りて故郷の造船場へ向かった。
造船場はコネチカット川の上流にある村だった。川と言っても、失礼だけど日本の川とは大きさが違うぜ。造るフリゲート艦は大砲を二十八門載せて六百トン、そう、ちょうど今俺が乗ってるイライザ号と同じくらいの大きさだ。そいつを上流で完成させたら、そのまま川をくだって海に乗りだせるほど大きな川なんだ」
(キウエモンが真剣な表情で口をはさんできた)
「そんなに大きな船を大工でもない素人衆が一緒になって造ったのですか?」
「もちろん船の設計はフィラデルフィアにいるハンフリーズって技師がやったんだ。その設計図をもとに町に住むコットンという船大工が監督をして、近在の人間を動員したのさ。
なにしろすべて手造りなんだ。現場では設計図なんて横目で見るだけさ。後はその場で間に合う木材をどう組み合わせるか、現場の船大工の胸先三寸で決まることさ。俺は現場監督の走り使いをしていたから、設計図をたびたび見せてもらったし、船の構造材の組み合わせも教えてもらったもんだ。