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一方、副燃焼室と主燃焼室間に設けられている制御弁の軸部にもシールリングが取り付けられている。このシールリングは軸部とシールリングの内径部隙間が10〜15μmでこの部分を通過するガス量は極めて少ない。しかし、軸部とスライドブッシュとの間は0.2〜0.3mmとクリアランスが大きいので、このシールリングに圧力が負荷され、外側から内側に収縮し、上面に貼り付く様に密着するとガス漏洩が極端に少なくなる。

このシールリングも上下2個取り付けられ、シリンダーから外部への熱の洩れを防止している。

従来の研究で、主室と副室間に設けた開閉弁のシールリングを軸部接触形としたところ、軸部に磨耗が発生し、この磨耗によりリング位置がずれ、更に磨耗を促進することになった。従って、リングにスリットを付け、外周圧力によってスリット部が完全に接触した状態でも、軸とシールリング内径部にはクリアランスが存在する様にした。径復運動形エンジンでは、シリンダー内の圧力が大きく変動するので、その圧力変動によってシールリングが開閉運動し、軸部のスラッジ堆積等を抑える事が出来れば最も良い。

図6.9にはその構造を示す。

 

6.5 遮熱型熱回収エンジンの熱流れ

天然ガス改質エンジンの燃費を改善するため、エンジンシステムのエネルギーフローを計算した。図6.10にその結果を示す。先ず、遮熱形エンジンは6気筒、排気量12リッター、ターボチャージャー付き、回転数は1500RPMとし、その熱効率を43%とした。この種のエンジン熱効率としては極めて大きい値である。通常の火花点火式天然ガスエンジンの熱効率は28%、圧縮着火式ディーゼルエンジンの熱効率が38%であるから、43%は相当高い熱効率である。熱効率の改善は、熱発生率を一般のディーゼル機関にいかに近づける事が出来るか、で決まる。このエンジンは予混合圧縮着火エンジンであるので、ノッキング、過早着火を発生させないで上死点直後で着火させることが、燃費改善上極めて大切である。そのためにはEGRを多量に行って燃費を抑制する事が必要で、本サイクル計算では30%程度のEGRを実施している。このEGR率で約18%の酸素濃度となるが、改質ガスの燃焼速度がメタンガスより早ければ、EGR量を増し、遅ければEGR量を減少する操作が必要である。

エンジンの後流には先ず、燃料改質装置を配置する。燃料改質装置は熱交換器と燃料改質装置を複合させたものであり、熱交換部は耐熱金属で作られた多孔質材で構成され、排気ガス通路側は通過面積が大きく、改質燃料側はその面積が小さい。双方のガス通路共、多孔質材が使われ、隔壁となる耐熱金属板を挟んで熱交換される。多孔質材は、同一体積のフィンを持つ熱交換器と比較し、熱交換面積が6倍になる事が過去の研究により確かめられているので、この材料を用いた。但し、多孔質材と平板の接合は極めて困難で、多孔質材の表面を加工し、その空孔を加工時の変形により埋設し、平板上に金属接合フラックス材を塗布し、その上に多孔材を重ね合わせブレージングした。

金属の接合材は、鉄、銀、銅、亜鉛、錫等種々のものを用い、温度によって接合条件が変えられる様にした。この方法によって、多孔質材と平板の接合が可能であることが判った。

多孔質材の表面には、アルミナ粉末と接合材を混合したゲル状のものを付着させ加熱接着させ、その上面に触媒であるRu、Ni、Pt、CeO2等を混合溶融した硝酸塩ゾル状材を付着させ、大気中で乾燥させ高温水素ガス中で還元させる。この様な方法により作成した天然ガス改質装置をエンジン後端に置く。燃料改質には高温雰囲気が必要であるが、CO2との反応改質では800℃で90%、水蒸気を用いた場合500℃で90%との従来研究の結果があるので、改質効率を向上させるため一部に水蒸気を加える。

 

 

 

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