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6.3 燃料供給方式

副燃焼室を持つ天然ガスを用いた予混合圧縮着火ディーゼル方式では、通常のHCCIエンジンの様に燃料噴射が出来ない。燃料が気体なので、噴射する場合でも噴孔が大きくなければ短期間に燃料供給できない。図6.7に天然ガスHCCIの燃料供給タイミングを示す。

副室への燃料供給は、吸気行程の後半から圧縮行程の始めとし、副室内に留っている期間を少なくし、副室内でのメタンの組成変化を少なくする様配慮した。メタンガスは、800℃以上の高温雰囲気で、容易に分解し、水素ガスを排出するので、高温雰囲気を作らない事と、高温雰囲気での停留時間を短くする事にした。副室弁からの燃料供給量は全体の20%で、その量は0.05gr/1cycle(最大値)であるので、弁径10mm、リフト5mm、背圧0.5〜0.7Mpaで十分に供給出来る。副室制御弁の入口前側には、アキュムレーターを取り付け、圧力を常に一定に保持出来る様にした。

吸気管に取り付けた燃料供給装置は、バルブ径40φ、リフト10mmとし燃料の全体供給量の80%を供給する。開弁期間は約40度(CA)で、吸気管燃料供給タイミングは、吸気行程のほぼ中間とした。(図6.8)(写真6.5)

 

吸気管燃料弁の入口側にもアキュムレーターを設け、燃料供給圧力が一定となる様にし、負荷に応じた燃料を供給出来る様にした。負荷変動は燃料弁の開放時間を制御する事によって対応する事にし、カムシャフトに設けた山型突起に対応するセンサーの位置を変えて上記時間を制御することにした。

二つの燃料供給弁は、電磁弁駆動方式とし、電磁弁の開弁信号はカムシャフトに設けた信号取り出し用突起を感知する方式とし、その信号取り出しは非接触型とした。今回のカムシャフトには、開弁タイミングを変化させる事が出来る様に、各種の突起を設けた。

図6.7に示す様に主室、副室間に設けられた制御弁は、圧縮上死点前30度〜10度に開弁されるので、CNG燃料は副燃焼室内に40度(CA)に留まる事になる。40度(CA)は、エンジン回転速度1500RPMで約4.4msであるので、この程度の時間ではCH4の分解反応は起き難いと推定した。

以上が燃料供給方式であるが、今後実験を進めながら開弁タイミングの調整を行う。

 

6.4 ガスシール構造

遮熱型エンジンでは、従来エンジンでの構造体が分割されている部位が多い。

例えば、ピストンは上部ピストンヘッドとピストンスカート、シリンダーはヘッドライナーとシリンダーライナー、燃焼室は外側からの挿入形、等である。

分割構造を採用した理由は熱伝導を遮断することであるが、分割すればシール性が必ず問題となる。特に、副燃焼室をヘッドライナーに挿入取付ける部分では、外周に溝を設け、スリットの付いたリングを嵌合した。リングは、外周側でヘッドライナーと密着する様にセットされている。シリンダー内のガス圧が大きくなると、リングは上部に押し上げられ、又、外側に圧着され、シリンダー内での大きいガス圧力がシール性を向上させ燃焼ガス洩れを防止する。このリングは2個取り付けられ、二段階のガスシールをする。ガスがほぼ完全にシールされると、この部分の温度上昇は余り大きくならないが、シール部分での当たりの不均一さ、及びダスト等による浮上がり等があると、ガス洩れを起こし、温度も急上昇する。

 

 

 

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