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CNGを予混合圧縮ディーゼルとして燃焼させる場合、着火温度が1100Kと比較的高いので、圧縮比が16程度のディーゼル機関では、自発火しない。しかし、このエンジンでは、主室と副室の間に制御弁を設けてあるので、この制御弁を閉じたままだと圧縮端の燃焼室体積が小さくなり、シリンダー内圧力が上昇する。従って、制御弁の開弁タイミングを上死点近傍に近づけない方が良い。

本研究では、上死点前20度(CA)で主室と副室間の制御弁を開弁することとしている。このタイミングだと主室からの希薄混合気が副室内に侵入し、高温度となって着火する一連の燃焼プロセスがスムーズに進行する。

副燃焼室を設けた理由は、着火性の安定のためである。部分燃焼を予混合圧縮形ディーゼル機関で実施させるためには、一部の燃料を混合気形成用に供給し、他の一部を燃料噴射させれば良い。燃料が気体の場合、燃料を噴射させるために高い圧力に圧縮しなければならない。この圧縮装置は極めて大型となり、圧縮エネルギーも大変大きくなる。CNGを余り高い圧力に圧縮せずに、噴射装置と同一の機能を果たせるように考案されたものが本システムである。図6.6には、副燃焼室の横断面図を示すが、この副室は、圧縮行程のBTDC20℃まで副室制御弁が閉鎖されていて、吸気行程の後半から圧縮行程前半までの期間、燃料供給弁が開弁され所定のガス燃料が供給されて副室内に充満される。既に述べた主・副室連絡制御弁が開放されると、主室内の希薄混合気が主室内に流入し、ガス混度、圧力が急増する。着火温度近傍に到達した燃料は一気に燃焼し、燃焼を完結する。

 

6.2.2 部分負荷と全負荷

本研究の燃焼方式では、全負荷燃料供給の80%までが吸気系から供給され、残りの20%は副燃焼室から供給する。従って、部分負荷時には副室からの燃料はそのままとし、主室側の燃料を徐々に増加させる。副室での燃料と主室内に存在する希薄混合気が混じり合って、予混合圧縮着火ディーゼル燃焼が実現する。しかし、この方式での最大の問題点は部分負荷時、主燃焼室の燃料密度が極めてリーンになる事である。余り希薄になると、燃焼室外周側隙間に入った混合気は、燃焼せずにHCとなって排出される。

今回、6気筒エンジンを使って、その2気筒を燃焼させる方式では、燃焼のタイミングが各回転毎になるので回転体は、スムーズに回転する。

この方式での燃焼の確実性をチェックし、更に今後3気筒運転の性能を調査し、エンジン全体としての部分負荷条件を気筒制御により、それぞれの燃焼シリンダーの負荷を大きくする方法により燃焼シリンダーでの燃焼条件を高負荷側にもって行く事を検討する。

全負荷領域になると、エンジン全体の温度が上昇し、圧縮端でのガス温度が上昇するので、この燃焼を抑えるためにEGRを多量に行う。EGRを多量に行うと吸入空気側ガス温度が上昇するので、EGRガスを熱交換器を用いて冷却する。EGRガス量の制御と温度制御機構が、本研究の大きな技術開発テーマとなるので、先ず、定量的にそれらのパラメータを変えた場合の熱発生率、燃焼期間等の調査を行う。

予混合圧縮着火ディーゼル方式で(HCCI)で、EGRを60%以上行うと燃焼始めのタイミングが遅れる事が確かめられている。天然ガスを用いた予混合ディーゼルでは、熱発生率の立ち上がりが大幅に抑制されると同時に、最大圧力も小さくなった。

 

天然ガスの燃焼では、予混合気を作り、その予混合気内の酸素濃度を小さくし、燃料分子が燃焼反応を始める温度に到達したら、燃焼室内で広範囲にまた同時一斉に燃え始める。燃焼は開始するが、その燃料分子の周囲には十分な酸素が存在しないので、燃焼は激しくなく、ゆっくり進行する。今回の研究テーマでは、燃焼速度の速いメタンを主成分とするCNGの燃焼速度をいかに減少させるのかであり、酸素濃度の減少が最大の燃焼制御方法であると考え試験を進める。

 

 

 

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