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上記の吸気ポート方式では、シリンダーヘッドの温度が120℃であっても、吸気温度を80℃以下に抑える事が出来る。

 

6.2 燃焼室

6.2.1 予混合圧縮着火ディーゼルエンジン

天然ガス改質エンジンでは、先ず、ガス燃料を用いた予混合圧縮着火燃焼方式を確立する事であり、圧縮比の大きいディーゼル方式を採用し、熱効率の改善を目指したい。

近年、予混合圧縮着火ディーゼルの燃焼についての研究が盛んに行われているが、この燃焼方式の特徴は、1]排気がクリーンに出来る。例えばNOX数十PPMレベル、すすゼロが同時に実現出来る。2]燃焼騒音を低く抑える事が出来る。等である。

反面、この種のエンジンは常にノッキングに悩まされると同時に、未燃HCが排出し易い事、運転範囲が制限される事等の問題が多く、研究課題は多い。

本研究では、主燃焼室に全供給燃料の80%に相当する燃料を供給し、残りの20%を副燃焼室に供給する方式とした。

主燃焼室は空燃費が15以上の超リーン状態の混合気が圧縮されているので、自己着火温度である1100K以下では、着火が極めて起こり難い。又、この温度付近で局部的に燃焼が発生しても火炎伝播しない。燃焼が着実に進行するためには、より大きなエネルギーを要する。副室では、燃料が充満した状態の中へ圧縮した予混合気が進入するので、自己着火温度に到達するとその近傍で即時に燃焼が始まる。着火した混合気は副室内のリッチ混合気に瞬間的に伝播し、連絡孔を通って主燃焼室に噴出する。この噴出火炎は大きなペネトレーションを持っている訳ではないが、連絡孔の近辺で着火火炎を形成し、火炎伝播によって主室内の超リーン予混合気の燃焼を促進させる。主室側は混合気が極めて希薄であるので、大きな着火源がないと燃焼が進展しないが、副室での火炎発生によって一気に燃焼が進展する。しかし、燃焼速度を大きくするためには混合気を燃焼室の中心付近に集めることが必要なので、ピストン外周部のスキッシエリアの空隙は1.5mmほどにし、スキッシ流れによって主燃焼室に約80%の混合気を集める。

エンジンの燃費性能を向上させるためには、拡散燃焼のピーク点を上死点後15℃以内に置きたい。この要求と初期燃焼の立ち上がりを出来るだけ抑制し、窒素酸化物の排出を減少させるためには混合気中の酸素濃度を小さくすることが有効である。酸素濃度を小さくするためにはEGRが有効であるが、そのEGR量による混合気中の酸素濃度の低下は、負荷によって大幅に異なる。

日本ファーネスの田中等は酸素濃度が16%以下の場合、燃焼温度が1800℃以上であっても窒素酸化物の生成は殆どないことを報告した。このことはディーゼルエンジンにも当てはまると推定し、以前CNGを用いて高EGR(排気ガス循環装置)の実験を行った結果、窒素酸化物の生成は10PPM以下であった。従って、遮熱エンジンで燃焼室壁面温度が800℃以上、燃焼ガス温度が1800℃以上であっても窒素酸化物の生成が抑制されて、かつ熱効率の良い燃焼条件を作り出す事が出来ると予測している。EGRは酸素濃度を小さくするために使われる有効な手段であるが、EGRを多量に行うためには排気系に絞り弁を設け、その圧力により吸気系に排気ガスを送付するが、EGRを多量に行うと排気ガスの温度が高いので、吸気の温度が高くなり燃焼に影響する。そこで、EGRガスの温度を低くさせる装置が必要である。

通常のディーゼルエンジンを予混合圧縮させるために、希薄混合気をシリンダー内に充満させ、圧縮上死点付近で一部の燃料を噴射させ着実に着火させる方式が考えられる。この場合、燃料である軽油を予混合させても、軽油の着火点が低いのでシリンダー内温度の状態によって、極めて容易に自発火する。

 

 

 

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