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特に、燃焼室部からの放熱については、受熱熱量を減少させる必要があり、燃焼室の構造を変えなければ実施出来ない。エンジンの性能評価と測温を実施しながら副燃焼室に魔法瓶構造を適用出来る技術を開発する必要がある。

次いで、ヘッドライナー上面の熱伝導であるが、ヘッドライナーから積層ガスケットを経て、シリンダーヘッドへの熱流は、ラミネート形ヘッドライナーガスケットの遮熱効果によって決まる。

これらの効果について、エンジンの性能試験、測温試験によって確認し、形状、材質、コーティングの有無についてその仕様を決定する。

 

6.1.3 遮熱エンジンの材料について

遮熱エンジンの開発では、材料選定が重要な技術テーマである。従来、遮熱エンジンの構成材料を日本ではセラミックスを欧米では耐熱金属にジルコニアセラミックスをコーティングしたものを使用して来た。

ガスタービンの分野では、ガス温度1300℃までは耐熱合金、1350℃以上では窒化珪素、炭化珪素が使われ、種々の開発が行われた。ガスタービンの最も厳しい部位は、タービンブレードであり、タービンブレードの温度を900℃以下に下げなければ十分な耐久性が得られない。タービンブレード表面にジルコニアコーティングを施すと、ジルコニアコーティングの薄膜層が温度を下げ、基盤金属の保護が出来る。この温度低減効果は50℃であり、この50℃の効果が金属材にとって耐久上極めて重要となる。

ガス温度が1350℃以上になると、タービンブレードの温度が950℃以上となり、耐熱金属の強度が200Mpa以下となり、とても連続して使う事は出来ない。この場合、窒化珪素、炭化珪素材が使われるが、窒化珪素材の耐熱性は1100℃、炭化珪素材でも1200℃が上限であり、これ以上の温度領域では、使用に耐えられない。又、セラミックス材では靭性値が小さく、破壊靭性値K1cの値が5〜8MPa・m1/2であり、通常の耐熱金属の値が100MPa・m1/2と比較し、極端に小さい。それによりセラミックス部品の破壊は突然発生し、その頻度も多かった。従って、信頼性が要求されるエンジン部品として、セラミックスを使用するためには、十分な品質保証テストを実施しなければならない。

本遮熱エンジンシステムでは、最高平均ガス温度を850℃とすると、壁面温度は780℃となり、この温度ならば耐熱金属で十分対応する事が出来る。

従って、今回のエンジンの試作は、耐熱金属を使う事とした。三菱マテリアルでは、ジェットエンジン、ガスタービンの燃焼室、タービンブレードとしてヘインズアロイNo.230、インコロイ等を製造している(図6.4)。

化学成分は以下に示した様になる。

 

035-1.gif

 

各温度における引張強さを下表に示す。

 

035-2.gif

 

 

 

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